ぶつぶつ日記
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2005年09月23日(金) 少女ヘジャル

みたいと思っていたトルコ映画「少女ヘジャル」を観た。
国なき民族クルド人、その立場は現在住居しているどの国でも
大変悪く、迫害されていると言っても過言ではない。
トルコでも、クルド語使用禁止だけでなく、さまざまな弾圧かにあり、
その結果過激な分離主義者(オジャラン氏はどうしてるんだろう?)の
テロ活動が活発になって、
状況は厳しいものがあった(ある、かも)。

そんな中で作られたこの映画は、
クルド人に対するトルコ政府の政策緩和に
一石を投げたと言われている。
実際、トルコ国内で上映するまでに、
実に5ヶ月もかかっており、
監督本人も訴えられたそうだ。

ヨーロッパとも見まごうほどの高級住宅街、
そこに住む若い弁護士女性の家に、
貧しい身なりの老人が、幼い女の子を預けに来ることから
物語は始まる。
弁護士の家には、なにやら眼光鋭い男女がいて、
子供を預かるような雰囲気ではないが、
そこはそれ、何だかんだ言ってまだ古きよき人間関係が残っている国、
子供を置いて、老人は去る。
弁護士の家の前には、元判事の老人ルファトが1人で住んでいる。
息子は海外に行っている様で、そろそろ老人ホームに・・・
と言っては、通いの家政婦に止められたりしている。

実は、向かいの弁護士の家は、クルド人過激分離主義者の根城で、
子供が来たその晩、警察が突入。
有無を言わさず、大人は全員射殺。
子供だけが助かり、偶然ルファト宅に迷い込む。

あとは、想像の範囲内で、ルファト老人と子供の
心のふれあいストーリーなのだが、
実は、ルファトの家の家政婦がクルド人で、それを長年隠していたり、
ルファトと階下のおしゃれな老婦人の老いらくの恋なども絡み、
政治的な問題と、現代の高年齢化の問題などが、
うまく絡み合って物語りは進んでいく。

両親と兄弟をテロリスト一掃で殺されているらしいヘジャルの、
感情の波の表現がとてもリアルで、何度も泣かされた。
また、ヘジャルを預かるルファトのおたおたぶりの愛らしいこと!
また、ヘジャルの親類が身を寄せたスラムと、
舞台となる高級住宅街の差が、現代のトルコの内政問題を、
かし痛烈に批判している。
そして実際、日々の悲惨なニュースを見ていたルファトが口にするのは、
「自分たちがこの国をこんなにしてしまった。」という自戒の念。
生きている現代トルコ史といえる75歳の年齢、
先人の責任というものを考えさせられるシーンであった。

最後の結末が、私の中では予想外だったが、
これまたなんとも、趣のある結末だった。
1人の子供の将来を案じる、何もかも異なる二人の老人。
彼らに共通しているのは、「この子を、幸せに・・・。」
という思いだけ。
だからこそ、彼らはヘジャルの意思を尊重し、
彼女の好きなようにさせるのだ。

世界にはヘジャルのような、そしてもっと悲惨な子供が
たくさんいるんだよなあ。
彼ら全てが、幸せになることなんてないだろうけど、
でも、やはり、願わずにはいられない。


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