万談館
DiaryINDEXpastwill


2002年09月24日(火) G3外伝  第1話 エウーゴ前夜(4)

 「キールピーク」に戻ったシオンはドック内がやけに騒がしいことに気がついた。
 まっすぐMSデッキに入ると、メカニックの数が少ないように感じた。
「何かあったのか?」
 シオンは近くのメカニックにたずねる。
「あ、シオン大尉。この艦のエンジンに異常が発見されまして、エンジンの積み替えが決まったんです」
「異常って、危なかったのか?」
「いや、詳しいことはわからないんですが、どうも故障じゃないようです」
「故障じゃない? エンジンの交換?」
 シオンはすぐにブリッジに向かった。

「艦長は?」
 ブリッジにラハト中佐の姿はなかった。オペレーターのトーレスに行方を聞く。
「艦長は外出しています」
「何処に?」
「さあ? 夜までに戻ると言っていましたが」
 トーレスは肩をすくめてみせる。それから軽く連邦章を叩いて、艦長がサイド6の連邦軍部に向かったことを暗に示した。
「そうか・・・。それで、エンジンを交換するんだって?」
「ええ。今朝大尉たちが出かけられた後、機関部から連絡があって工作の後が発見されたそうです」
「工作? スパイが乗っているのか?」
「艦長はそう考えているようですね」
「ちょっと考えられないが・・・」
 この艦はブレックス准将(当時)の部隊である。そのことを聞いているシオンには信じられなかった。
「それで、エンジンの交換は何時?」
「エンジンが完全に停止してからですから、早くても15時間後に取り掛かる、と思います」
 機関士が答える。
「エンジンの積み替えは最短で5日ですが、今は戦時中でもありませんから。10日から15日、今月いっぱいはここ(サイド6)にいるでしょうね」
「今月いっぱいか・・・」
 シオンのつぶやきにトーレスが反応する。
「大尉、今嬉しそうな顔しませんでしたか?」
「いや? 別にしていないぞ」
「本当ですかあ?」
 周りのオペレーターが一斉に笑う。
 シオンは戸惑ったように、困ったような笑ったような表情を見せた。

 シオンがMSデッキに戻ると、ちょうどワンも戻ってきたところだった。
「大尉。しばらくサイド6に駐留というのは本当ですか」
「ワン軍曹も聞いたか?」
「はい。スパイの工作ですか?」
「うん? ・・・そうだ。今聞いたのか?」
「はい、そうです」
「そうか。この機会に自分のMSの整備をやっておこう」
「はい。わかりました」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ティガ・アンダーソン中尉
21才の女性。インド生まれのイギリス人。
町を歩くとスカウトに声をかけられるような美人。
表情が生きいきとしていて、特に笑顔が印象的。

(前回、載せるのを忘れてました)


つかさ |MAIL

My追加