永久という名の瞬間
2004年04月29日(木) 知ることが出来なくて、よかった

歪んだ輪郭。
低くて形の悪い鼻。
手入れをしていない眉。
厚ぼったく、小さい目。
高さの違う唇の端。
肉のつきすぎた頬。

 鏡を見ていると、気が滅入る。
 写真を見ると、泣きたくなる。
 目が顔についていて、良かった。不細工な顔が見えなくて済んだもの。

 もし人間が、己のありのままの姿を見てしまうことが出来たのなら、生きていけなかったろう。
 少しでも美人な姿を想像して、すこしでもまともな状態が真実だと思い込んで、なんとか暮らしてるのだ。
 外見も、内面も同じこと。

 お風呂に入ると、独り言を言う回数が倍増する。
 そこには大きな鏡があるから。私は鏡に映る私に対し、知らぬ間に話し掛けている。
「おまえなんか死んだ方がマシなんだよ」
「醜い面して、よく生きてるよね」
「バーカ。死ね死ね」
(記述してみると、自分の語彙のあほさにあきれかえる)

 私はというと、自分で自分でいったことの返事を頭で考えている。
「知ってる。だけど、死ねないだけ」
「だって私、めくらだから」
「・・・・・・・」
 1人二役で、間抜けな演劇。

 まぁ、世の中は鏡。
 目の前に鏡がなくたって、以外に自分の姿は想像できるけどね。
 確信が持てないあたり、そこに生きる術が隠されているのだろう。

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photo by 東雲