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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2001年10月27日(土)
大人のファインプレー


 学生時代、道徳の授業で「大人になるとはどういうことか」というテーマで議論することがあった。結論は、「精神的・経済的に自立すること、すなわち人に頼らないこと」で締めくくられたが、私は何か釈然としなかった。大人になるって一体どういうことなのだろう。疑問が残ったまま学生時代を終えた。
 2,3年ほど前だったと思う。
 16歳のある不登校の少女が「大人について」と題して弁論をした。そのときの結論がひどく印象に残っている。
 「本当の大人は人の助けを借りることができる」
 確かそんな内容だった。衝撃的だった。人間一人では生きれない。自分で出来ること出来ないことをわきまえ、信頼できる人を見極め、素直な気持ちで助けをお願いする。全体のことを考えると必要なことかもしれない。年齢では大人である私より、その少女の方が遙かに大人だなあと感じた。以来、私の「大人」の定義はそれを拝借している。

 今日は、滋賀・守山球場で社会人野球のびわこ杯を観戦した。びわこ杯は、クラブチームを対象に行われる準公式戦だ。プロが注目するような選手は皆無。企業チームのような華やかさもない。でも、そこには一生懸命楽しくプレーする選手の姿があり、またレベルも高いのだ。昨年観戦して以来すっかり虜になってしまった。
 高校野球を主に見る私にとって、社会人野球は時として新鮮な驚きを与えてくれる。同じ野球だから、選手の体格や打球が違うのは当然と言える。しかし、高校野球ではほとんど見れないプレーにお目にかかることがある。その一つを今日の第三試合で見ることができた。通算3回目の目撃だが、いつ見ても初めて見たような新鮮さを感じる。
 打球はセカンド横に飛んだ。深いところだ。セカンドはなんとか追いついて捕球した。しかし、「そこから間に合うか?」という距離。姿勢を変えて送球じゃとても間に合わない。並のセカンドなら間違いなく内野安打コースだ。しかし、その選手、とっさの判断でショートにトスしたのだ!ショートもそれがわかってたかのようにポジションをとり、すばやくファーストへ送球。アウトかセーフか?!私は息を飲んだ。
 判定は際どいタイミングで、セーフ。横で前の試合を終えた選手が、「惜しいなあ。でもショートうまいわ。ボールが右にそれるっていうことは上手い証拠やで」とうなっていた。すばらしいプレーだった。
 一般的に、ファインプレーとは、捕れそうにない打球を捕ってアウトにしたときに使う。しかし、このプレーを敢えて「ファインプレー」と呼びたい。前述の選手はショートを誉めたが、私が注目したのはセカンドの選手だ。
 あれは、セカンドのファインプレーだと思う。セカンドの選手は、自分が投げても間に合わないことが分かっていたのではないだろうか。だから、送球しやすいショートに処理を任せたのだと思う。ゴロは基本的に捕球した人がさばく。高校野球の場合、その多くが一か八かでセカンドが送球するはずだ。それアウトが取れればいい。しかし、そうでない場合も往々にしてありゆる。その可能性を考えたプレー。私は冒険しないプレーは好きではないけれど、このプレーは好きだ。
 
 16歳の少女が言っていた「大人」を野球で表すときっとこんな感じなんだろうな。そう思った。