paranoia kiss
    

スポーツカーのバケットシートに体をうずめ、
高速を飛ばして、小一時間。
海の見える防波堤まで行くのが好きだった。

高速は大概空いていて、
あたしより背の小さい彼のハンドル操作に
命を預ける。

防波堤では缶コーヒーとタバコ。
別に何をするわけでもなく、
寝転がったり、うだうだと話すのが常。

オンナガ スウ タバコジャナイ。

ただフィルターの部分がお気に入りだっただけ。

ジッポのレディースライターを貰った。
イニシャルが入ってた。
なのに、あたしの手にはあまりにも小さすぎて。

モウイッカイ サガシテクル。

後日、普通サイズに交換してもらった。
今はもうどこにあるのかもわからない。

周りの人が振り返るほど身長差があった。
待ち合わせのたびに、探すのが大変だった。
いつも見つけてもらってた。
そんなことも、もうない。

2006年10月28日(土)



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