paranoia kiss
    

業者の男性からエゴイストの香りがした。
ふっと記憶が戻ってしまう。

初めてその香りが鼻をかすめたのは、
タバコの煙とアルコールの匂いが入り混じった空間だった。
本当にエゴイストというにふさわしい彼。

その香りが気に入って、譲ってもらった。
以来手放さず、自分の香りとした。
彼は海が好きでよく出かけた。
二人して同じ匂いで。

時が流れ、エゴイストとは程遠い彼に
自分の使いかけを贈った。
なぜだかわからなかったけど。
アロハシャツにエゴイストの香り。

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赤い糸は1本しかないから、
きちんと見定めてほしいと思う。

僕も時々この赤い糸が赤なのかどうか
わからなくなる瞬間があるけれど。

そうして、エクストレームを香らせる君に惹かれる。

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エゴイストの彼はもうとっくに
この部屋を去ったというのに、
残り香に悩まされている。

窓を開け放っても
鼻についた残り香。

いや、記憶が香りとなって残っているだけなのか。


2007年01月16日(火)



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