セージさんが買ってくれたガム。 仕事中、行き詰まったから「ちょうど息抜きにいいや」って、取り出した。
ふと。
もしかして、こんな感覚で私を誘ったの? もしかして、暇つぶしに私と付き合ったの?
仕事が暇な時期、早く帰って時間を持て余すことも多かっただろう。 そういう時、誰かがいてくれたらなあ、なんて、誰でも考え得ること。 そんなところにクラブで私と出会った。 「気のあるところ」を見せられ、私は見事に落ちた。 そして、死ぬほど仕事が忙しい今、彼に私はいらなくなったのかも。 だって、暇がなくなったんだもの。
一気に落ちた。
こんなことを考えて落ち込むより、いっそ別れた方が楽。 彼もそれを望んでる。 だって、考えなくていいんだもん。 もう嫌。 信じられない。 信じたい。 疑うのは悲しい。 私のこと、迷惑な存在なんだろうか。
こんなこと考えちゃいけないって分かってるけど、
***
週末、勝手にセージさんの部屋を訪ねた。 どうしても会って話をしたくて。 会えるかも分からないのに、勝手におしかけて、 だけどそうでもしないと会えないままだから。
部屋は真っ暗だった。 「仕事終わったら連絡して」 そうメールしておいたけど、ずっと来なくて。電話も出なくて。
数時間待ったけど、終電がヤバくて仕方なく帰った。 会いたかった。
メールが来たのは翌日の午後。 一晩中仕事だった。って。
何でそんなに働かなきゃいけないの?! セージさんだって、それが良くて働いてるわけじゃないって分かる。 会社の体制の問題だってこと。
こうなるのは彼は知っていたから、私も聞かされてた。 また深夜まで仕事になれば、連絡も出来なくなるって。 それが今、現実となっている。
私が「無理だから別れる」と放棄してしまうのは簡単。 だけど…、ほっとけない気持ちもある。 今、彼がいっぱいいっぱいなら前のような余裕があるまでに戻る時まで 待ってたいって気持ち。
だけど、そのうち、彼は遠くへ行ってしまう。 離れ離れになる時間は迫ってる。
毎日、毎日、心の中で「会いたい」って何度も想って、叫んで。 たくさん、たくさん、名前を呼んで。
だけど、それをセージさんに伝えることは出来ないまま。
大好き と 信じられない と
相反する気持ち。
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