日々あんだら
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2013年08月05日(月) |
屋久島旅行記(くすくす編) |
7月30日。 二度目の縦走チャレンジが二度目の敗退に終わったあと、おれは傷心を癒すため、湯泊温泉へ向かった。 海際にある露天風呂で、夕暮れて行く空を見上げながら、己の実力の無さを嘆いていた。
で、お風呂から上がった後、スペイン人とイタリア人のカップルに出会った。 スペイン人の彼の方は(後からわかったんだけど)日本人とのハーフで、日本語はペラペラだった。 話を聞いているとおれと同じく、キャンプ場でテント泊まりをしてるらしい。
「どこのキャンプ場?」 「くすくす」
おお、昨日近くを通ってちょっと気になってたところやん。楠川の怪しいドラえもんの近所。(笑)
「どう?」 「いいよー」 「どこが」 「人が良い」
おお、そうか、人が良いのか。それは一番やなぁ。 実はそれまで泊まっていたキャンプ場、広いし人少ないし静かだし海際だし設備は整ってるし、 結構気に入ってたんだけど、なんせ栗生、西部林道のすぐ近く、ということは屋久島の端っこである。 お風呂入るのも、外食するのも、買い物するのも、車で片道30分。さすがに不便だ。 花山歩道に一番近いキャンプ場やから泊まってたけど、もう花山歩道には行かんし。
「おれもそこに移ろうっかなー」 「おー、おいでよ」
そんなご縁で、翌日ちょっと下見して、さらにその翌日、モッチョム岳に登って下りて来たその足で くすくすに向かったのだった。
前日にも応対してもらった管理人さんにあいさつし、「先にテント立てて」と言われたのでテントを立て、 (山用のテントはおれみたいに不慣れな人間でも15分あれば完成する) 炊事場兼食事場兼憩いの場みたいなところに案内される。他の宿泊者の人たちが3人くらいいた。 で「宿帳書いて」と宿帳を渡される。 名前、年齢、職業、住所、電話番号、ニックネーム…ニックネーム? なにゆえニックネーム?(笑)と思いながら「ヒデ」と書いて渡すと「ふんふん、ヒデさんね」と呟いて、 「はーい、ヒデさんです!」と周りの人たちに紹介された。 なるほど。(笑)
「イズミです」「ハルです」「ユキです」と周りの人たちからも自己紹介される。どうもー、よろしくー。 その後も外から帰って来た人たちがまずはそこにやってきて「ただいまー」「おかえり!」と声を掛けあい、 「はじめましてユッコです」「あ、はじめまして、ヒデです」みたいに自己紹介し合う。
なにこれちょっとおもろいやん♪
実はそれまでのキャンプ場は宿泊者同士のコミュニケーションがほとんどなくて、 まあ朝早く起きて山に向かう場合にはその方が都合よかったのかもしれないけど、 やっぱりちょっと淋しかったのだ。^^; それがアナタ、ここだとテント設営完了5分後には友達できましたよ。(笑) ユキさんが朝市で買って来たキュウリに、ハルさんの味噌をつけて勧めてくれる。やばい、止まらん。 お礼にオリーブハーブ塩を勧めてみる。好評で嬉しい。^^
ご飯も、みんなそこで作ってそこで食べる。 管理人(まっちゃん)にお願いしたら1食500円で晩ご飯を作ってくれるんだけど、 頼んだ人も自炊の人もみんなで一緒に食べる。そして飲む。 ユッコさんの娘のひーちゃん(6歳)がカブトムシの雌を見つけて大号泣する。 かと思ったら、蛾は平気で虫取り網を持って追いかけまわしている。 例のカップル(トモさんとマルゲリータ)が帰って来たので「来たよー!」「おー!」と手を振りあう。 まっちゃんが横を流れている川でエビを取ってきて素揚げにしてくれる。 それに、オリーブハーブ塩をかけて食べる。たまらん。 星が見たくなったら歩いて5分の砂浜まで星を見に行って、寝っころがって天の川や流れ星を眺める。 戻ったらまっちゃんやトモさんが「大企業は信用できない」「医者は信用できない」って語り合ってて、 それを黙って聞きながら持ってったエスプレッソメーカーでエスプレッソを淹れる。 (一応、おれも大企業の一員なので会話に参加しづらい。^^;) するとトモさんが食いついて来て、「明日の朝、それ貸して」「いいよー」とエスプレッソメーカーを置きっぱなしにしとく。 というか、テーブルの上は誰のかわからないお菓子やお茶が散乱している。(笑) 蚊取り線香は何本もガンガン焚かれているけど、虻には全く聞かなくて、定期的に誰かが「イテっ」と声を上げる。(笑)
混沌としてるけど、とても居心地のいい時間。
翌日は朝早く起きる必要が無かったので朝寝しようと思っていた。思っていたのだ。 が、
「コ、コ、コ、コッケコッコーーー!!」
という大音響で目が覚めた午前5時半。 犯人は、こいつらだった。
くすくすで飼っている、鶏さんたちの大行進。 それがご丁寧におれのテントの横に居座って雄たけびを上げ続けるのだった。 なんだこの洗礼は!?これがくすくすの歓迎なのか!!!?
と寝ぼけた頭でわけのわからんことを思いながら二度寝は諦めて起きることにする。 帰って来た今でも思うんだけど、朝寝ができないことがくすくすの最大の欠点だ。 だけど、その代わり美味しい卵を産み落としてくれるので我慢すべきか… (ちなみに卵集めはひーちゃんの日課になっていた)
諦めて朝ごはんを作って食べてたら、ひーちゃんが起きてやってきた。 ひーちゃん、すごく人懐っこい子なんだけど、最初は人見知りするらしく、挨拶しても目も合わせてくれない。^^; が、なにがどうなったのか知らないけど、ある瞬間、いきなりおれに打ち解けてくれた。
「ひーちゃんの秘密基地教えてあげる!」 「どこどこー?教えて!」
即座に食いつくおれ。そして連れてってくれたところは…
「ここ!」 「すげーーー!!」
おれのテントの前だった。 どうやらおれは、ひーちゃんの秘密基地にテントを張ってしまったらしい。(笑)
「ひーちゃんね、レポーターなの!」 「マジかー!」 「じゃあ、おじちゃんゲスト!」
え?おれゲスト!?(笑) てか、おじちゃんちゃう!おにいちゃんと呼びなさい!!!(母親より年上なくせに厚かましい…笑)
ということで、レポーターひーちゃんのモーニングレポートで、 川とか魚を捕まえるための罠とか鶏がいつも卵を産む場所とか、 ひーちゃんちのテントとか、誰がどのテントで寝てるかとか、 いろいろ細かく教えてもらった。^^
この日は、イズミちゃんと屋久杉ランドへ。 ここ、里から入口までがすごく遠くて、山道をグネグネ何十分か走り続けなくてはならない。 でもその分、歩き始めてすぐ深い森の雰囲気を味わうことができる。 5年前、初めて屋久島に来た時に練習で歩いたことはあるんだけど、それ以来の訪問だった。
が、ここ、記憶してたよりずっと良かった。 ちょっとタイプは違うんやけど、ある意味、白谷雲水峡よりもいいところかもしれん。 なにより、人が少ない!だからゆっくり森を味わうことができる。
そして、同行者のイズミちゃんがまたおもしろかった。 自然に対する感受性がものすごく高い。体全体で自然を味わおうとする。 そして、本当に大きな木や、美しい流れを見つけたら手を合わせて拝む。 自然に対するそういう接し方っていいなぁ…と思う。 おれもつられて、自分ひとりで歩いている時よりも確実に自然を深く感じられた。
ある箇所で、橋の下の河原に下りられる場所があって、思わず2人で下りた。 流れで顔を洗ったり、水を飲んだり、流木の上に寝転がったりしてたんだけど、 大きな岩の上でイズミちゃんがヨガを始めた。 ヨガインストラクターの彼女が大自然の中でヨガをする姿は、素人のおれから見てもとても綺麗で気持ちよさそうで、 ひさしぶりにカメラマン魂に火がついてしまいましたよ。^^; 彼女に断って、ヨガをしてるところをライカとNEXと彼女のi-Phoneの3台でガシガシ撮る。 フィルム丸々1本、彼女のヨガだけで撮りつくしてしまった。(笑)
大川の滝と西部林道を回ってくすくすに帰還。 山に登っていたツトムさんとジョシュのコンビが還って来ていて、はじめましてのご挨拶。 ツトムさん、2〜3年かけて世界一周してきた人らしくって、相当おもしろい人でした。 YouTubeでもののけ姫の主題歌を再生しながら一緒に歌ったりとか。(笑) この後、携帯に入っている写真の見せ合いっこ(というか、対決)したんやけど、 オーロラとかウユニ塩湖とか、おれが死ぬまでに一度は行きたいと思っているような場所の写真が ワラワラ出て来てどうしようかと思った。(笑)
お風呂の後で、ユキさんに切り絵をしてもらう。 彼女は、人と向かい合って、顔を見たり話をしたりしてイメージを掴みながら、切り絵を作る人。 そうやって北海道から屋久島まで旅をしてきたらしい。
どんなのができるんだろう?とワクワクしながら見てたら、青いメタリック系の折り紙を選んで、 折りたたんでハサミを入れて、時々紙の上で何かを確かめるみたいに手を動かして… 「あれ?柔らかいのかと思ってたら、意外と強いね」と言われた。 見てみたら、雪の結晶みたいな、冷たくて鋭い感じの模様ができ始めていた。
この日記を読んでくれてる人はみんな知ってると思うけど、ええ、ワタクシ結構強いです。 というか、相当強いです。 でも、初対面に近い人たちにはそういうところはさすがに出さない。^^; 出さないのに気付かれた!!!
ユキさんの手が信じられないくらい細かく動いて、どんどん複雑な形が浮かび上がってくる。 すげーー!!きれーーーー!!!って内心思いながら見ていたら、途中で「うーん…」と悩んで、 しばらくずーっと悩んで、「重いな、切っちゃおう」と中心部をすっぱり切られてしまった。 そうかー、そういうことかー。 多分、おれの芯の部分はいろんなものが絡まり合って複雑になっちゃってるんだけど、 「シンプルにした方がいい。もしくはシンプルにしようと思い始めている」んだそうだ。 確かに、心当たりはある。
中心部をすっぱり切り落とした切り絵を眺めて満足げなユキさん。 クリアファイルに入れてメッセージを添えて渡してくれた。 ありがとう、大切にするわー!!
子供(ひーちゃん)が寝た後で、大人たちで浜辺に繰り出す。 1枚の敷物に6〜7人でぎゅうぎゅうに座って、波の音とユッコさんのウクレレを聞きながら星空を眺める。 なにこれめっちゃ青春!!(笑) 「ここにいる女子4人をキュンキュンさせるようなことを言ってみなさいよ」とイズミちゃんに無茶振りされる。 「大阪の男はロマンチックなことなんか言われへん」と言って逃げるエセ大阪人。 みんな背中合わせに座ってるので、誰かが「流れ星見た!」と言っては背中合わせの人間が悔しがる。 下手くそなドラえもんの物真似(?)で盛り上がる(???)。 眠くなった人から帰って行って、ジョシュとユッコさんとアサちゃんとおれが最後に戻ってきた。 屋久島最後の夜が、最高の夜だった。 明日は早起きして朝日を見るぞー!!と張り切って寝る。
翌朝、まっちゃんとイズミちゃんと3人で水平線から登る太陽を見た。 瀬戸内育ちは水平線を見るだけでテンションが上がる。(笑) 屋久島って、夜から明け方にかけては意外と涼しくてテントでも寝やすかったんだけど、 太陽がちょこっと顔を出した瞬間に暑くなり始めるのがわかる。 やっぱり太陽のエネルギーってすごいなー。
帰りに、砂浜に降りてウミガメの赤ちゃんの足跡を探した。 一直線に海へ向かう足跡もあれば、人間の足跡に落ちかけ、慌てて引き返し、石を乗り越えられずに方向転換して、 別の足跡をよけて…と紆余曲折している足跡もあった。 その様子を想像してキュンキュンする。(笑)
みんながいる間は一緒に居ようと思って、テーブルのところでダラダラする。 ハルさんがジャンベ(太鼓みたいなアフリカの打楽器)を叩く。
独学らしいけど、屋久島の空気とぴったりマッチしていてとても心地よい。 そのリズムにたまらなくなったユキさんが躍り出す。 切り絵をしている時は真剣でめちゃくちゃかっこよかったユキさんは、踊ってる時に一番いい顔をする。 すごく楽しそうで、思わずひーちゃんも近くで眺めたり抱きついたりしてた。(笑)
この日、ユッコさんとひーちゃんとハルさんとユキさんは永田の農家で稲刈りのお手伝い、ということで、 出発するみんなを見送る。 今日立ち去る人間がみんなを見送るという変な図式。(笑) みんなと握手してハグしてまたねー!ってバイバイ。 実質、1日半しか一緒にいなかったのに、家族か親戚みたいになってしまった。^^
みんなが出発してからテントと畳んで、テーブルのいたるところに散らばっていた自分の物を片付け、 カオス状態な車の荷台を整理して荷物をまとめる。 2時間近くかけて片付け、屋久島滞在残り5〜6時間、どうしようかなー…というところから、 スタッフのアサちゃんとなぜか絵しりとりで盛り上がる。 約1時間半。(笑) どちらも絵心がなくて、他人に見せるには恥ずかしすぎる絵しりとりができてしまった。^^;
午後1時半、まっちゃんやアサちゃんとそれぞれツーショットで記念写真を撮影して、くすくすを出発。 安房でご飯を食べ、お土産物を買い、荷物を半分発送して、一湊珈琲でコーヒー豆を買い、ガソリンを満タンにして… 空港に向かう途中にくすくすの前を通るので、思わずまた寄ってしまった。(笑)
まっちゃんとアサちゃんに最後のご挨拶をして、今度こそ本当に出発。 最後、アサちゃんが駐車場まで出て来て見送ってくれた。 一人で旅立つのではなく、誰かに見送られて旅立つことができて本当に良かったなぁ。
*
正直、ここでのラスト2日間がなかったら、今回の屋久島旅行は苦いものになっていたと思う。 一番やりたかった、屋久島縦走がまったくできなかったから。自分の実力の無さを思い知らされたから。 でも、縦走できなかったからこそ湯泊温泉でトモさんたちに出会え、くすくすに移って、友達がたくさんできた。 本当に楽しい2日間を過ごせた。 今では、縦走できなくてかえって良かった!と思える。 どこにどんないいことが転がってるかわからないのが旅だと知ってたけど、今回ほどそれを実感した旅は無かったなぁ。 管理人のまっちゃんを始め、変な人しか集まらないくすくす。 次回行く時には最初からここに泊まろうと思います。^^
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