日々あんだら
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浅田次郎『終わらざる夏』上中下巻、夢中になって5日間で読み終えた。
第二次世界大戦の最後の、そして終わった後の数週間の物語。
大本営参謀の、45歳で召集された英訳雑誌編集者の、その帰りを待つ妻や同僚の、勲章を授かった再召集軍曹の、徴兵逃れに手を貸していた元町医者の軍医の、徴兵名簿を作成する老兵の、赤紙を配達する町役場の役人の、無傷のまま敵が攻めてこない北辺の島に取り残された最精鋭師団の、最古参の准尉の、戦車乗りに憧れる少年兵の、その島にある使命を秘めてやってきた方面軍参謀の、島の缶詰工場に送られた女子挺身隊の少女たちの、缶詰工場の社員の、疎開児童の、その引率の教師の、懲役から徴兵されて向かう途中に終戦を迎えたやくざ者の、帰りを待つ母親の、空襲で家族を無くした人たちの、ソ連軍の小隊長の、その部下の砲兵の、、、それぞれの戦争と終戦。 列挙してても信じられないんだけど、これだけの人たちの思いや立場が「たった」3冊に描かれている。 あまり書くとネタバレになるからやめとくけど、ここに描かれている人たちは誰も戦争を望んでなかったし、どうしたらそれ以上余計な犠牲を出さずに戦争を終わらせられるか、元の生活に戻れるかを全身全霊で考えていたのに、どうしてあんな戦争が続き、あんな戦闘が起こってしまったのか、すごく考えてしまった。
戦争は町を、家を、家族を灰にしてしまうだけでなく、思い出までを灰にしてしまう。 戦争は言葉本来の意味を奪って歪めてしまう。
もちろん、これはある程度史実に基づいた上での作者の創作なんだけど、 戦争を知らないどころか普段考えもしない僕にとっては衝撃だった。 この季節に手に取って読むことができて良かったと思う。
もうすぐ68回目の8月15日が来る。
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