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2004年01月25日(日) ■ |
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「東電OL殺人事件」新潮文庫 佐野眞一 |
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「東電OL殺人事件」新潮文庫 佐野眞一 東京電力に総合職で入った慶応大学経済学部出身のエリートOLは、もう一方では円山町で立ちんぼの売春をしており、ある日何者かに殺される。 このノンフィクションはそのOLの心の中まで映すことには成功していない。事件の実態はどうだったのか、ネパールから来た出稼ぎ外国人労働者が容疑者として浮かび上がるが、最近の報道を見ているとどうやら闇の中に葬り去らされようとしているとしか言いようがない。私は「冤罪」だと思ったが真実はどうなのかはわからない。どちらにせよすべてが中途半端なことしかわからない。 ところがその中途半端なところがこの本の欠点になっているかというとそうとも言い切れないところがこの作品の面白いところだ。現在進行形の事件の場合、著者の視点から選ばれた事実を読むことで、私たちはいくつものことを考えさせられる。ノンフィクションの面白いところである。OLの中の「心の闇」と外国人労働者の実態、二つの「大堕落」と「小堕落」を描きながら、本来出会うことのない二人がなぜか出会う。世の中とは不思議なものである。
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