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2004年01月29日(木) ■ |
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「柿照」講談社 高村薫 |
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「柿照」講談社 高村薫 この冬「マークスの山」を文庫版、単行本の順に読み、合田刑事シリーズにはまってしまった私である。
合田と森のコンビが、8月2日の電車で、偶然轢死事故を見るところからこの物語は始まる。女を弾みで電車の前に突き落としてしまった男。その男を亭主だという白いブラウスの女。合田は轢死した女を別れた妻貴代子ではないかと疑ったりしている。今回の合田は単行本版の合田の続きである。断じて文庫版の合田ではない。貴代子のことをこんなに女々しく思いつづけているのだから。
この作品は表面は犯罪小説ではあるがそう思って読むと消化不良を起すこと必死である。「罪と罰」を探る暑い暑い夏の数日間であり、自分自身の「暗い森」の中で「呼び止めるべき人の影」を見出す物語なのだ。「罪」というは、法律の条文に現れた事象のみを意味するのではない。「罪」の自覚無しには「罰」は現れない。なんて自分かってな「恋」だったのだろう。自分を追い詰めるだけの「仕事」だったのだろう。いわばそういう私にもある自分自身の「罪」を自覚するまでの物語。
実は私はこの作品をドフトエフスキーの「罪と罰」と並行して読み、読書ノートにまでとって読んだ。しかしそれてでもいまだにどう整理していいのか分からないでいる。今年100冊近く読んだ本の中でベスト3に残る作品になった。
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