将来、単行本を出すのが目標だ。でも、何を書きたい、誰を書きたいという具体的なことは何ひとつない。ただ、読み終わったあとに「あぁ、この本読んで良かったなぁ」と思える本を書きたい。それだけは頭にある。
半年ほど前から貪るように小説を読むようになった。それを知っている上司に「誰が面白い?」と聞かれたことがある。私は「宮部みゆき」と答えた。すると、上司は言った。 「宮部みゆき、おれも読むよ。確かに面白いよ。でもさ、宮部みゆきを読んで人生変わる?」 「いや、変わらないです」 「そうだよね。面白いけど、人生や考え方が変わることはあまりないよ。おれは読んだ人の人生が変わるような本を書いて行きたいんだよね」 私は、うんうんと頷いた。
『新潮45』に「読まずにすませるベストセラー」というコーナーがある。毎月3つの本を選び、要旨をかいつまんで説明し、読んだような気にさせる。 11月号では高橋源一郎氏が書いた『1億3千万人のための小説教室』が紹介されている。 私は紹介記事の冒頭に、釘付けになった。
「最後の頁を読み終えて顔をあげたとき、目に映る姿が、これまでとは違ってみえること。 良い本の条件はただ一点、これのみである。世界中が輝いて見えるような、ドラマティックな変化ではなくてもいい、ほんの僅かな変化でいい」
将来、本を書きたい。
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