2003年11月05日(水) |
投資をむずかしくしたのは、誰でしょうか? その3) |
もしわたしが 「カンさん、投資をむずかしくしているのは、誰ですか?」 と訊かれたら
わたしは「第一に、マスメディアです」と答えます。
その罪は何なのか?
運用者 を 時間スパン が短い、劇場空間 に誘っている という 罪 です。
先日申し上げたように、 私たちの「お金をめぐる状況」は大きく変化しています。
金融商品の 選択肢 も増えました。
さまざまな人がさまざまな場所で 「投資の必要性」を説いています。
でも、ちょっと待ってください。
金融商品の 選択肢 が増えるということと、 金融商品を選択する 回数 が増えることは
まったく別の話 ですね(笑)
例えば、雑誌は毎週、毎月、 新聞は毎日、テレビは毎時間、 インターネットは毎分「新しい情報」を届けています。
(こと投資に関して言えば)
マスメディアから 「新たな選択」を促すような雑多な情報が、
短すぎる時間スパン で、 我々運用者に届けられている気がします。
そこには(当然?)
新聞・雑誌、テレビ、インターネット と 「スポンサー契約」を結ぶ金融機関の存在 がちらつきます。
(マスメディアにとって、金融機関は お客様 なのです)
金融機関は 「金融商品を選択する 回数 が増えてくれた方が、利潤 が多くなる」 という 動機 を抱えています。
そうです。
「投資をむずかしくしているのは、誰ですか?」 というご質問には
「第二に、金融機関です」とわたしは答えます。
わたしはよくお客様にこういうお話をするのです。 「○○さんは何のために 投資 を行うのですか?」と。
来年の夏に、 家族でオーストラリア旅行に行くためですか?
3年後に新しいクルマを買うためですか? それともセカンドライフの生活資金のためですか?
「いいですか。週刊誌は毎週、毎週 新しい情報 を読者に届けなければいけません。 それは彼らの仕事なのです・・」
「証券会社は新しいファンドを発売して、 それを売らなければなりません。 それは彼らの仕事なのです・・」
では、私たちはどうでしょうか?
マスメディアや金融機関が演出する 短い時間スパン に いちいち付き合う必要があるのでしょうか?
週刊誌の目的は たくさん売れることです。 証券会社の目的は(ファンドを)販売することです。
「○○さんの目的は何ですか・・?」
「私たちは、私たちの目的に合致した 時間スパン を堅持すればいいのです」
(シンプルですよね?)
(これは投資に限らず、ですが)
情報 が溢れるほど、感情 に訴えられるほど、 物事の本質 が見えにくくなるのではないでしょうか。
私たちが「投資」という作業において、 常にイメージしておかなければならないのは その「本質」であり、
本質 とは(大抵)シンプルで わかりやすいものなのです。
今、わたしはメディアの批判をしましたが、 稀に(豊かな地下水脈のような) 書物 に出会うこともあります。
例えば、
インデックス・ファンドの時代 アメリカにおける資産運用の新潮流(東洋経済新報社)
ジョン・C. ボーグル 著 井手 正介 監訳 みずほ年金研究所 訳
です。
この本の 第1章 「長期投資とは チャンス氏の庭造り」の中に、 チャンス氏による次のような文章があります。
< チャンス氏の庭造り >
私は庭のことをよく知っています。 私はそこで一生働いてきたからです。 そこでは全てのものが力強く育つのです。
そしてそこにはさまざまな 新しい木々や花々のための空間もあります。
もし庭を愛しているのなら、そこで働き、 じっと待つことを嫌がってはいけません。
然るべき季節がくれば、 必ず色とりどりの花が咲き乱れるのを 目にすることができるのです。
そう・・。 育てる。 土の力、太陽の力 を感じる。
そして、植物自体の力、 「潜在成長力」をイメージする。
その力を信頼して、 「長い時間スパン」を持つ。
そして、育む・・。
わたしは「庭造り」こそが 投資の本質 と考えます。
このイメージを堅持することが、
情報の洪水に溺れない、 短い時間スパンに陥らない 秘訣 だと思っています。
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