2005年10月26日(水) |
ベチャの面6(完結編) |
「ベチャよ。べちゃよ」とはやしたてて逃げて行く子供達を追っかけて、小学校前の文房具屋前までくると、餓鬼大将の富雄がするめを齧りながら、女の下駄を頭の上にかざして「香織の下駄はトウキョウセイ」と節をつけて歌っている。下駄をとられた香織が「返して頂戴」と泣きべそうかきながら富雄を追っかけている。 清一は香織の災難を見ると富雄の恐ろしさが頭の中に閃きはしたが、それよりも香織の下駄を取り替えしてやらなければならないという考えの方が先に走った。つかつかと富雄の傍らへ近づいて襟首を掴むといきなり、頬に平手打ちを一発食らわせた。不意打ちにあってたじろいだ富雄が鼻の穴を大きく膨らませてピクピクさせている。すかさず清一が青竹を振り上げると、怯えた富雄は声も出さずに逃げ出した。
清一はこんなに簡単に事が運ぶとは予想さえしていなかったのであっけにとられたが、富雄の逃げていく姿を見ると追っかけてみたくなった。追いかけてみると富雄は一生懸命逃げていく。相手が逃げるとますます面白くなって清一はどんどん追いかけた。今日こそは何時もいじめられている仕返しをしてやろうという気持ちが起きて、富雄が悲鳴をあげるまで追いかけ、青竹で叩いてやろうと清一は思った。面を被っているので、誰がやっているかわからないだろうという気持ちが富雄を大胆にした。いつも威張って清一達をいじめている富雄の姿が今日程みじめに見えた日はなかったと清一は思った。そして、香織にはベチャの面を見せるのはやめようと思った。走りながら今日の出来事は内緒にしておこうと思った。
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