2003年09月24日(水) |
Selfish loved |
ただ本当に俺は君を好きなんだ。
目の前にあるものは最早生きていない人間。 どこかで間違ったのか? ただ人を好きになっただけなのに。
俺はいつだっておまえを応援していた。 ブラウン管の中、キミはいつだって笑顔で 悩みなんて何にも感じずに生きているようで それはとてもうらやましい反面、少しだけうんざりしていたんだ。
だって、俺はおまえに触れることがなかなか出来なくて、 少しの時間でも良いからメールだけじゃなく、会話だってしたかったんだ。
ただ無機質に並ぶ文章よりも、感情のこもった声を、お互い聴いた方が断然幸せだろう? 以前におまえは言ってたじゃないか。
「だからって疲れている人間に電話につき合えってのは非道くないか?」
「でも声を聴きたいんだ」
「だったらCDでも、ラジオでもテレビでも聴いてくれよ」
「……だからって。そんな言葉は非道すぎやしないか?」
「もう、うんざりなんだよ。いちいち電話したりされたりするのは。解ってくれ よ」
「何勝手なこと言ってるんだよ。おまえが最初に淋しいからって言ったんだろ」
「確かに言ったさ。だけど限度ってものもあるだろう?」
「……俺が悪いって言うのか……?」
「……しつこいって言うんだよ」
「最低だな。……おまえ」
しょうがないじゃないか。今だって疲れた身体引きずってこうやって会いに来てやったって云うのに。 芸能界って仕事は、いつだってどんなに頑張っていたって、それこそ表立って活躍しなければすぐに忘れ去られてしまう世界なんだ。 デビューする前にアイツに言った言葉は嘘じゃない。 でも、それだってそれが返せないことだってあるんだ。 それこそ、それを察して欲しいんだよ。
結局会話はそこで止まって、俺たちはそこで別れたんだ。 感情なんてものは、とても危ういものなんだって。 でもそれは友情だけじゃなかったのを、本当はその時に思い知っていた。 学校さえも違えば、最早逢うことすら出来ない世界に住んでいた俺たちだった。 別に次元が違ってしまったわけじゃないのに。 俺たちは会う努力すら怠った。 もう少し、お互いを思いやって、ほんの少しで良いからメールでも遣り取りしていれば。
久しぶりに出会えた俺の感情は最早どうにもならなかった。
「どうしておまえの隣に立ってるのは俺じゃないんだよ」
「なに言ってるんだ? どうしたんだよ」
「どうしておまえの隣にいるのが俺じゃないんだよ!」
「だから」
「俺はずっとおまえを待ってたんだ。おまえだけが必要だったんだ。なのにおまえは全然違うヤツを隣に置いてどうしてそれで笑えてるんだ?」
「――っ」
「なぁ? おまえの隣は俺の居場所だろ? 俺だけが必要だろ。俺だけを見ていれば良いんだろ」
「なに、言ってるんだよ? 落ち着け。な? どうしたんだよいきなり。こんな所まで来て」
「俺は落ち着いてるさ。なぁ、来たって良いだろ? だっておまえは俺だけのものだし、おまえだって俺だけのものなんだから」
「おまえだけのものって何だよ。なに言ってるんだ?」
「好きなんだよ」
「――あぁ、そっか。うん、俺も好きだぜ」
「じゃぁなんでおまえの隣にはそんな女が居るんだよ」
「そんなって。なに言って……」
「俺はおまえとヤりたいってんだよ」
「――――ッ。ふざけんなっ」
「なにがさ。正直な話しだよ」
「ずっと裏切ってたのかよ」
「裏切り? 違うさ。ただ俺は自分の感情に嘘を付いてただけ。で、おまえを大切にしてきただけ。……簡単なことだろ?」
「俺の、感情はどうだっていいのかよ」
「おまえがいつだって一人なら別に良かったんだ。でもおまえの隣には俺じゃない存在が出来たのを、俺は黙ってみてられなかった。ただそんだけさ」
「勝手すぎるだろ」
「そうかな」
「おまえが離れていったのに。おまえが俺を切ったのに」
「それでもおまえは俺を見ていればよかったんだ」
「……最低だな。おまえ」
別れた時に最後に言われた言葉をまた言われた。 ああそっか。 俺って最低だったんだ。 そうか。 まぁいいや。 だって俺はおまえの人生に関われたんだ。 最後の瞬間に。 おまえは俺だけを見ながら死ねたんだ。
どこかで耳に響くような悲鳴が聞こえてる。 誰かが呼んだのか、種類の違うサイレンが複数聞こえてきて。 それでも俺はそこから動かない。 ただ眼下には。 鮮血に彩られた俺との友情を信じていた人間がだんだんとただのものに変わり果てていくのが見えていた。 俺だけのもの。
「衝撃的なニュースが飛び込んで来ました。今日午後8時過ぎ、東京都××で若者に絶大なる人気を誇る歌手◯◯が路上で若い男性と口論の末殺傷したと……」 「殺されたのは○○とは友人関係にあった男性と見られ……」 「目撃者の話によると……」
――ただ本当に俺は君を好きなだけ。
|