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| 2024年08月03日(土) ■ |
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| 世界バレエフェスティバル Aプロ |
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世界バレエフェスティバル Aプロ@東京文化会館 大ホール
歳を重ねたダンサーが、衰えていく自身の身体とどう向き合うか。それは踊りとともにある人生との対峙でもあり、踊りを奪われた(あるいはいつか奪われる)現在と未来をどう生きるかでもある。この物語は悲劇なのか、それとも。
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ジルの出演は早い段階から決まっていましたが、6月に入ってから十市さんの出演も発表され、大慌てでチケットをとりました。
この少し前から、十市さんがinstaにジルと踊っている画像を上げていたんですね。どこかで発表するのかな……と思っていましたが、まさか日本でのステージになるとは。という訳で世界バレエフェスに初めて行きました。1976年に始まった、3年に一度の超豪華な祭典。
・概要/世界バレエフェスティバル/2024┃NBS日本舞台芸術振興会 世界が東西で対立し、移動手段や情報伝達においても今日ほどの自由が与えられていない世の中で、当時の三大プリマが同じ舞台に立つ。その事実は世界に衝撃を与えたとともに、芸術こそが文化や政治の違い、そして国境を越え人と人とをつなぐ架け橋になれるのだということを証明しました。
ずっとそうあってほしいものです。それにしても17回続けた経験値でしょうか、劇場のオペレーションも素晴らしかった。入退場の案内もそうですが、4時間半という長丁場を滞りなく終えるための工夫が端々に感じられました。4部構成、15〜20分の休憩が3回。一斉にトイレに行列が出来ます。しかもここ5階席迄ある。インカムで連絡を取り合い、列の短いトイレへ誘導するスタッフ連携の見事なこと。歴史あるフェスのため高齢客も多いのですが、その案内も丁寧。私の席の近くにいた杖のお客には、休憩時間毎に様子を見に来て離席や着席の介助をするスタッフがいました。
生オケで踊る作品もあれば、録音された楽曲が使われる作品もある。演奏しないときオーケストラピットから退場する演奏者の移動もスムーズ。各国から集まる出演者の多さとスケジュールからしてみっちりリハは出来ないであろう生オケのガラで、指揮と演奏、踊りがピッタリだったことにも驚かされました。最小限の舞台美術(素舞台も多い)で転換もスピーディー。演目と出演者名が映像で出るのも親切。上演作品が多いため、よく知らないと「今何踊ってる?」となりますもんね。東京文化会館では主に東京バレエ団とモーリス・ベジャール・バレエ団(BBL)を観ていますが、いつもNBSの対応には感心させられます。
特別協賛はコーセー。デコルテのサンプル等の配布があったり、大谷翔平、羽生結弦、�盒桐�、Shigekixの4選手から出品されたチャリティーオークションアイテムの展示もありました。コーセーってアスリートのサポートに力を入れてますよね。
プログラムはこちら。上演順は以下。
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■第1部
序曲「戴冠式行進曲」(ジャコモ・マイヤベーア)
「白鳥の湖」より黒鳥のパ・ド・ドゥ(ジョン・クランコ) マッケンジー・ブラウン(シュツットガルト・バレエ団) ガブリエル・フィゲレド(同)
「クオリア」(ウェイン・マクレガー) ヤスミン・ナグディ(英国ロイヤル・バレエ団) リース・クラーク(同)
「アウル・フォールズ」(セバスチャン・クロボーグ) マリア・コチェトコワ ダニール・シムキン
「くるみ割り人形」(ジャン=クリストフ・マイヨー) オリガ・スミルノワ(オランダ国立バレエ) ヴィクター・カイシェタ(同)
「アン・ソル」(ジェローム・ロビンズ) ドロテ・ジルベール(パリ・オペラ座バレエ団) ユーゴ・マルシャン
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■第2部
「ハロー」(ジョン・ノイマイヤー) 菅井円加(ハンブルク・バレエ団) アレクサンドル・トルーシュ(同)
「マノン」より第1幕の出会いのパ・ド・ドゥ(ケネス・マクミラン) サラ・ラム(英国ロイヤル・バレエ団) ウィリアム・ブレイスウェル(同)
「ル・パルク」(アンジュラン・プレルジョカージュ) オニール八菜(パリ・オペラ座バレエ団) ジェルマン・ルーヴェ(同)
「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」(ジョージ・バランシン) 永久メイ(マリインスキー・バレエ) キム・キミン(同)
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■第3部
「3つのグノシエンヌ」(ハンス・ファン・マーネン) オリガ・スミルノワ ユーゴ・マルシャン
「スペードの女王」(ローラン・プティ) マリーヤ・アレクサンドロワ(ボリショイ・バレエ) ヴラディスラフ・ラントラートフ(同)
「マーキュリアル・マヌーヴァーズ」(クリストファー・ウィールドン) シルヴィア・アッツォーニ(ハンブルク・バレエ団) アレクサンドル・リアブコ(同)
世界初演「空に浮かぶクジラの影」(ヨースト・フルーエンレイツ) ジル・ロマン 小林十市(モーリス・ベジャール・バレエ団)
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■第4部
「アフター・ザ・レイン」(クリストファー・ウィールドン) アレッサンドラ・フェリ ロベルト・ボッレ(ミラノ・スカラ座バレエ団)
「シナトラ組曲」(トワイラ・サープ) ディアナ・ヴィシニョーワ(マリインスキー・バレエ) マルセロ・ゴメス(ドレスデン・バレエ)
「椿姫」より第1幕のパ・ド・ドゥ(ジョン・ノイマイヤー) エリサ・バデネス(シュツットガルト・バレエ団) フリーデマン・フォーゲル(同)
「ドン・キホーテ」(マリウス・プティパ) マリアネラ・ヌニュス(英国ロイヤル・バレエ団) ワディム・ムンタギロフ(同)
フィナーレ「眠れる森の美女」よりアポテオーズ(ピョートル・チャイコフスキー)
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作品数と出演者の所属並べるだけでもヒィーとなりますね。何かあったらおおごと……主催者のプレッシャーもすごそうとつい考えてしまう。ここでは主に『空に浮かぶクジラの影』のことを。今日に至る迄の経緯もメモしておきます。
ジルがBBLの芸術監督を解任されたというニュースが飛び込んできたのは今年2月のこと。日本語の記事に詳細がなく、翻訳アプリに頼り本国の記事をいくつか読みましたが、正直不可解なことが多い。その“不可解”な部分については、十市さんの寄稿で知った次第です。
・【寄稿】ベジャール・バレエ・ローザンヌ芸術監督ジル・ロマンの解任について(小林十市)(2024.02.09) ・【寄稿】小林十市(ベジャール・バレエ・ローザンヌ バレエマスター)〜カンパニーの舵取りと行き先。そして世界バレエフェスティバル出演のこと(2024.07.26)
しかしここではもうひとつの問題、数年前から話題になっていたジルのパワハラ行為についてが曖昧なままです。それについては、ジルと長いつきあいである�盒凝吃�NBS専務理事のこの記事が全てを物語っているように思います。
・新「起承転々」 漂流篇 vol.83 時代(2024.02.21)┃NBS News ウェブマガジン
その後、ジュリアン・ファヴローが正式に芸術監督に就任。そしてBBLの経営危機が報じられました。まあ次から次へと……。
・Julien Favreau nommé directeur artistique du Béjart Ballet Lausanne(2024.06.28)┃Béjart Ballet Lausanne ・ベジャール・バレエ団、財政難に直面(2024.07.02)┃SWI swissinfo.ch
BBL公演にも影響が表れました。ジルが近年取り組み、今秋の来日公演プログラムに入っていたベジャール旧作の復刻上演『わが夢の都ウィーン』が、『バレエ・フォー・ライフ』に変更されてしまいました。『バレエ・フォー・ライフ』は大好きな作品なんだけど、『わが夢の都ウィーン』を初めて観られると楽しみにしていたのでなんとも残念……。ちなみにBプロにはジルの振付作品『だから踊ろう…!』が入っています。作品に罪はないということなのか、当事者(被害者も加害者も?)が去り問題ないということになったのか……? ジュリアンの『ボレロ』出演は発表されているけれど、じゃあ『バレエ・フォー・ライフ』のあのフィナーレは誰がやるのか? 考え出すとキリがありません。今はとにかく、バレエ団の皆が落ち着いて作品に専念出来る環境が提供されるよう祈るばかり。
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そんないろいろなことに思いを巡らせ乍ら観ざるを得なかった「空に浮かぶクジラの影」。ふたりのためにフルーエンレイツが振り付けた新作の世界初演ということもあり、それはあまりにも痛切な感動を呼ぶものでした。
プログラム中唯一の男性ペアによる作品。揃いの黒いスーツで、背中合わせでピタリとくっつき、あるいは手を繋ぎ、光と影のように踊るジルと十市さん。上半身の振りが多い。何かを振り払うように、激しく腕を動かす。見たくないものがあるかのように、顔の前で掌を交差させる。それは何度も繰り返される。軽やかなステップはやがてもつれ、膝を折るジル、倒れるジル。寄り添うようにジルの肩を包む十市さん。効果的に使われていた風船は、白、赤、黒、白と色を替え、ふたりの間で破裂したり、頭を抱えるジルの上に十市さんがかざしたり、空気が抜けて上空に飛んでいったりする。最後ジルにより息を吹き込まれた風船は、再び弾むように元気よく揺れる。
死と再生というとありきたりだろうが、それが描かれた作品だと感じた。ステージの縁に腰を下ろし、オケピがいる奈落に足を投げ出しているジルから発せられる強い孤独。その姿を前に、寄り添うことに粉骨砕身する十市さん。クジラ=巨大な影に覆われるちいさな人間ふたりがあがき、沈み、やがて浮かんで大きな波に身を任せる……そこに見えてくるのは新しい道か、新しい出会いか。そうあってほしい。溺れるのはまだ早い。
長い人生の間には、幾度も喜びと悲しみが降りかかる。どんなに光の中で生きていても、死ぬ瞬間は闇の中。終わりを幸せだったと微笑むか、不幸だと嘆くか。死の瞬間が詰まった芸術でした。カーテンコールでやっと微笑んだふたり。Leonard Cohen「Avalanche」、Lou Reed 「Vanishing Act」、Antony and the Johnsons「Hope Theres Someone Chords」という選曲も印象的でした。
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『空に浮かぶ〜』以外はリラックスして楽しめました。どれも素晴らしかったなー、息を呑みっぱなし。メイさんとキミンさんのパ・ド・ドゥは前半のハイライト。テクニックがハッキリとわかるパートだったこともあり、客席の反応もよく、割れんばかりの拍手が送られました。エリサとフリーデマンの踊りにはドラマがあり、通しで観たい欲が高まりました。ガラだから1組10分ってところだものね。
演奏は東京フィルハーモニー交響楽団、指揮はワレリー・オブジャニコフとロベルタス・セルヴェニカス、ピアノは菊池洋子、チェロは⻑明康郎。そう、ピアノが菊池さんだったのです。贅沢! しかもこのツイートにあるように6演目(!)に出演。舞台袖の花道での演奏を終えると急いではけ、ダンサーとともに舞台に上がる。舞台上での演奏もあり、この日いちばん挨拶をしていましたね(笑)。「3つのグノシエンヌ」のサティ(『グノシエンヌ第3番」)には聴き入ってしまった。『アン・ソル』のラヴェル、『アフター・ザ・レイン』のアルヴォ・ベルト、フランク・シナトラのナンバーで構成された『シナトラ組曲』といった選曲も印象的でした。
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華やかなフィナーレ! 十市さんは遠慮がちに後方にいました、謙虚
『エリア50代』から3年が経ち、BBLの来日公演はもう来月。今度はバレエマスターとして来日ですね、待ってます!
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