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2025年05月02日(金) ■ |
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『バースデイ・パーティ/天国の暴動』 |
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『バースデイ・パーティ/天国の暴動』@シネマート新宿 スクリーン1
バースデイ・パーティの前身ボーイズ・ネクスト・ドアの映像も沢山。高校の同級生でバンド組んで、一緒にオーストラリアからイギリスに引っ越して、共同生活しててお腹空かせてドラッグもぐもぐ。必然のようにバンドは崩壊していく。せつない。『バースデイ・パーティ/天国の暴動』
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The Birthday Partyの誕生から終焉迄を描いたドキュメンタリー。バンド唯一の公認作品とのこと。
エグゼクティブプロデューサーがミック・ハーヴェイ。こないだのinstaのボヤキを思い出してしみじみした。当時唯一シラフのメンバーだった訳ですがってかあの環境でよくシラフでいられたなと感心もする…酒で一回ステージ台無しにしたみたいだけど。 (画像はアンパンマンとの並びがシュール過ぎて思わず撮りました)
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) May 3, 2025 at 1:00
ミックが絡んでるんだから公認も何もねえ。ちなみにもうひとりのエグゼクティヴプロデューサーはヴィム・ヴェンダース。監督はイアン・ホワイト。
ドキュメンタリーだけどエンタメ作品としても観られる仕上がり。当時の写真や映像は結構残っているものの(それがいちいち貴重なものばかり!)、メンバーの証言にはそうした記録媒体がない密室で起こった出来事も多く、それらをインタヴュー映像と音声だけで構成してしまうとどうしても退屈なものになってしまう。そこで効果的だったのはラインハルト・クライストによるアニメーション。ニック・ケイヴが学生時代に起こした悪行の数々、トレイシー・ピューがデビュー後に起こした悪行の数々はアニメで再現。クライストの筆は、メンバーの表情を悪魔ではなく、いたずらっ子の天使のように描く。あっ、やっちまった、失敗しちゃった。後先考えずにやったことが大ごとになって、気まずそうな顔をする天使たち。
とにかく思うのは、ニックよく死ななかったな……ということ。ミック・ハーヴェイ以外はドラッグまみれで、ステージにシラフで立っていたことは殆どなかったようだ。トレイシーはバンド解散後程なく亡くなり、ローランド・ハワードはこの映画のインタヴューを終えた数年後に亡くなっている。インタヴュー映像の彼はどう見ても憔悴しており、死の影が忍び寄っていることが判る。だよなあってひとから死んでってる。ニックはバースデイ・パーティ解散後すぐにThe Bad Seedsを結成し、精力的な活動を続けていく。やっぱりドラッグって体質の向き不向きがあるのだろう。酒もそうだもの。ヤクの成分を分解出来る頑丈な内臓と血管を持っていたのだろう……と現実的なことを思うが、それでもやらかした事故も数多く、こればっかりはもう運だとしか思えない。神のご加護といえばいいのか? こんな傍若無人な子と「Mum! Our Single has been Reviewed!!!」(後述『NICK CAVE/20,000 DAYS ON EARTH』参照)という手紙を母親に書いた天使のような子が同一人物なんて、神さまも随分手こずっただろうよ。
そして、観れば観る程ミックの超人ぶりに感嘆。あのメンバーに囲まれて、あの環境でドラッグをやらなかったこと、あの中にい乍らシラフで、常識人でいたこと。一周まわって超人としかいいようがない。フィル・カルヴァートをクビにしたのがミックだったというのも今回初めて知った。驚いた。クビにするならトレイシーだろうに(笑)。ミックはこの魅力溢れるバンドを継続させるために最善の判断を下したともいえる。これも一周まわって狂気すら感じてしまう。そんなミックも、今はバッドシーズから離れている。少し前に彼はinstaで、「ミック・ハーヴェイ、バッドシーズに戻る?」という記事の画像を載せ「(It's not off the table, but)there is no table」と意味深長なことを書いていた。
思うのは、ニックたちにも青春があったんだなあということ。バースデイ・パーティは青春だったということ。皆音楽と詩の才能があり、鋭い知性と繊細な心の持ち主だった。それらがドラッグやら何やらが原因で立ちいかなくなっていく。仲良しの友達から始まったバンドが壊れていく。青春が終わる。バンドの儚さ、人間関係のせつなさ。ひとはこうして大人になるのかも知れないけれど、その過程で失うものはとても大きく、取り返しがつかない。そしてこんなギリギリの状態だったバンドが鳴らす音は、とてつもなく美しく獰猛だった。それこそ天国で暴動が起こるかのように。
楽曲を知ったときにはもう存在していなかったバースデイ・パーティ。その背景を知ることが出来、とても有意義な作品だった。「バッドシーズの前身、若く狂暴なバッドシーズ」というイメージだったが、バースデイ・パーティにはローランドとトレイシーがいた。あの5人でしか成し得ない音を奏でるバンドだったのだ。
しかしニック、最後の来日から27年(ヒィ)経つけど彼の映画はコンスタントに日本公開されますよね。『NICK CAVE/20,000 DAYS ON EARTH』もちゃんと映画館で公開してくれたもんね。配給さん有難う……と、ここでふと思ったがグラインダーマンってもうやらないのかなあ。
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荒野さんが通路挟んで隣の席でした(にっこり)。
で、この画像見て思い出した。最初にこのジャケット見たとき、なんでこいつがこんなフロントマンみたいにジャケットに載ってんだよと思ったんだ(ヒドい)……というかそもそもは私にこのCDを貸してくれた会社の先輩(バッドシーズもこの方に教えてもらったのでした。お元気かしら)がそういったんだよ(笑)。「ニックがバッドシーズの前にやってたバンドっていうから買ったんだけど、届いたとき返品しなきゃと思ったよ、レコード屋さん商品間違えたんじゃないのって!」って。 ことほど左様にトレイシーの存在ってずっと謎だったのだが、今回ステージ映像を観て、“バースデイ・パーティ”のイメージを率先して体現していたのは彼だったのかなあなんて思ってしまった。他のメンバーはクレイジーなステージに疲弊していたし飽き飽きしていた。最後の最後迄“バースデイ・パーティ”だったのは彼だったのかも知れないな
ブリクサも終盤出てくるよ。バースデイ・パーティの末期(…)になるともう普通にスタジオにいる(笑)ニックが例の出会いの話してました、「世界でいちばん美しい男」のとこはカットされてたな! シネマートの力入った場づくり最高!
[image or embed] — kai (@flower-lens.bsky.social) May 3, 2025 at 1:00
ブリクサと出会ったことがバースデイ・パーティの終わりを早めたのかもなあとは思いましたね。遅かれ早かれ、ではあるが
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