すごい昔のハナシ。 あたしはすごく、 面倒くさい恋愛をしてた。
付き合ってる人がいて、 その人以外の人を好きになっちゃって… それに気がついたのは、 服部っていう、「付き合ってる人」に、 告られた後だった。 あたしが好きになっちゃった、 タモツってやつと、その服部は、 親友みたいなかんじだった。
あたしには、 服部と付き合うのをやめることも、 タモツに想いをつげることもできなかった。 苦しかったし、 しんどかった。 あたしと服部が仲良さげに喧嘩してるのを、 おもしろそうに楽しそうに眺めてるタモツを見るたび、 自分のやってることの意味がわかんなくなって、 焦った。
あたしのその状況に、 気がついたただ1人の男が、 尚だった。
バレたのは軽いきっかけだった。 尚のひっかけに無防備にあたしが引っかかった。 誰かに言いふらされたらどうしようって焦ったあたしに、 「誰にも言わない」って誓ってくれて、 街中で会ったりしたときに、 2人で話すようになった。 唯一あたしの秘密を知ってくれてる人がいるってのことは、 そのときのあたしにとってすごい、 気が楽になるもので。 尚は喧嘩友達だったし、 決してイイヤツってわけじゃなかったんだけど、 そばにいると安心した。 尚も、 あたしのそばでは安心して煙草を吸ったし、 いろんなことを話してくれた。
そのときの尚の癖が、 頭をなでることだった。 イイコイイコ、って。 頭をなでて慰めてくれる、 その手の感触に、 あたしはすごい安心した。 許されてる気がして。
服部に対しても、 タモツに対しても、 罪悪感にさいなまれて、 自分が解決できないことなのに、 傷つく自分が馬鹿らしくて、 あたしの心にはたびたび暗い闇がかかった。 尚は、 それを癒してくれるわけじゃなかったけど、 静かにそばにいてくれたし、 そういうあたしを認めてくれてた。 弱いあたしを、 認めてくれてた。
だからあたしは、 いまだに「イイコイイコ」に弱い。 頭をなでられることに、 メロメロになる。
単純で馬鹿らしいけど、 それはあたしの癖。 結局あたしは、 自分で思ってるほどオトナじゃない。 誰かにイイコイイコしてもらいたがって、 だけど素直になることもできない、 天邪鬼な子どものままなんだ。
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