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猛毒。
リョウ
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2004年09月12日(日) ■
その名の通り本日は吐かせていただきますよ、猛毒をば。��

★★続き★★


アネキが、
「自分なら言って欲しくない」といってくれたことで、
アタシは少し楽になり、
自分の正直な気持ちもユッコに喋った。

「川ちゃんのことをしゃべって欲しくなかった。
 ただユッコが感じたこととして喋ってほしかった。
 川ちゃんがどう思ったかなんて知りたくなかった」

ユッコは、「あたしもそう思ったから言ったんだよ?」と言った。
そういうことじゃない。そんなことが問題なのではない。
「川ちゃんが実際に傷付いたなんで事実を知りたくなかった。
 ユッコには、川ちゃんとしゃべったことをだまっていて、
 ただ自分が感じたこととしてしゃべって欲しかった」
と言った。

そしたら、
となりでアネキが、
「それは無理があるよ、それはリョウがすごく考えるヒトだからだよ」
と言った。
確かに、と思った。
「うんまあ、そうだよね!」
とアタシは笑った。
そのあとは、いろんな考えかたとかを話しつつ、
だけどユッコがビクビクしていることは知っていて、
アタシはユッコの言葉を真剣に聞くフリをしていた。
自分がこれ以上傷付くのを避けるために、心に膜を張る必要があった。
アタシは終始、ヘラヘラと笑った。
アタシはさっきのユッコの話で傷付いてなんかないよ、
考えるところはあるけれど、
それが致命傷になったりしないし、
そんなに傷付いていないし、
ユッコのことを嫌ったりしないよ――などということを。
アピールするかのように、いつもよりもより悪ふざけをして、ニヤニヤと笑った。
だけど頭の隅はずっとシビれていて。
しばらくして店を出て、笑顔でしゃべり駅で別れて、
家まで自転車で帰る途中で、少し泣いた。

家についたら、家族の前ではヘラヘラと笑い、
次の日のセミナーをキャンセルして学校に行けるようにした(アネキと喋りたいもという気持ちが強かったからだ)。

家に帰ってからしばらくしてユッコからメールがきた。

『あたしリョウのためになればいいって思って、
 言いたいって思ったから言ったけど、
 やっぱり言い方は間違ったなって思った。
 ごめんね。
 だけどその後も普通に接してくれて、
 嫌だって思ったこと言ってくれて嬉しかったよ(^○^)』

アタシはしばらく、複雑な思いでそのメールを見た。
返信をするのがひどく億劫だった。
ここで、アタシは、また冷静なフリをして相手を気遣う言葉をかけなければならないのか、と思って。
ユッコと一緒にいる時、アタシは我慢して、
自分が冷静でいることを強いた。
帰る道々で少し泣いて落ち着かせた心が、
またぶるぶると震えた。
まだ、アタシは、自分の気持ちに嘘をついて、メールを打たなければならないの?
 
嫌だ。 
なんか、もう嫌だ。
嫌気がさして、しばらく携帯を放置した。
「メールに気がつかなかった、ってことにすればいい」と自分に言い訳をつくった。
正直、「メールに返信しなければ、ユッコは効果的に傷付いてくれるだろうか?」とも思った。
「メールに気がつかなかった」という言い訳をつくって、
アタシが偽善者の仮面をかぶり続けることは出来る。
アタシが責められることを、アタシが悪者になることを、避けて、ユッコを傷つけたいと思った。

だけど、しばらく後には、返信のメールを打つために、携帯をとった。
もし返信をしなければ、そのことにユッコは思い悩むかもしれないからだ。
そんなことになれば、アタシが冷静に我慢した意味がない。
偽善者の仮面を一度かぶったのなら、最後まで責任をとらなくちゃいけない。
嘘を一度ついたら、その嘘をつき続けなくてはいけない。
それは、アタシの、自分の中のルールだ。

『うん。アタシも、ユッコがアタシのために言ってくれてるのは分かってる。
 それは嬉しかったよ(^○^)』

と返信をした。
「それは嬉しかった」というフレーズの「は」を、
どうするかしばらく迷った。
他の事は嬉しくなかった、という意味だからだ。
この言葉はヤバイだろうかと考えたが、もういいや、と思ってそのまま送った。
自分の本心だ。
別にいい。
確かに、嬉しいことなどではなかったのだから。 
 
そして夜中に、やはり消化できなくて、1人で部屋でぶちぶちと愚痴を言った。
そして泣いた。嗚咽をこらえて泣いた。
次の日、アタシの目はすっかり腫れていて。
仕方ないので、帽子を目深にかぶって、少し濃い化粧をした。
残念ながらアネキは疲れていて学校には来ず、
ユッコとふたりで、
少しのぎこちなさを残しつつも、
普通にしていた。
していたはずだった。

次に行く予定の鳥取旅行の企画をたて、ホテルを予約した。
楽しいことを少し喋って、それから帰った。



その、一週間後・・・、
鳥取旅行についてアネキと話してて、
色々細かいことを決めて、ユッコに「どう?」ってメールいれたときのこと。

ユッコは多分その日バイトで。11時過ぎにメールの返信がきた。

『リョウごめんなさい。
 アタシ旅行行けないや・・・
 ほんとは水曜に直接会って二人に言うつもりだったけど心がまたおかしい。
 今回は原因もわかってるし大丈夫だから心配しないでね(^_^)
 だけど旅行は行けない。
 いっぱい準備してくれて楽しみにしてただろうに、
 こんな事になってごめんなさい。
 アネキにも今からメールいれます。
 キャンセルの事とか自分でしたいんで、 
 だけどやり方わからんので今度教えて下さい。ごめんねm(__)m』




呆然とした。
ハ??と思った。
旅行中止になんの?って。
イライラした。
自分が楽しみにしていたことを、
すごくワクワク考えていたことを、目の前でぶち壊しにされた。
アネキに連絡いれて、他の子誘ってみようかってことになったけど、
結局その子たちも無理で。
2人して、すごいテンション下がった。

無理していく必要のない旅行だってわかってる。
ユッコのツライことがなにかは知らないけど、
そんな思い気持ちを抱えてまで、
行く必要のある旅行じゃない。

だけど、腹が立った。
なんでこんな風に、こっちが嫌な気分にならないといけないの?
友達の都合で。そんなの、こっちには関係ないよ。
イライラして、イライラして、どうしようもなかった。

その2日後、ゼミがあってみんな学校に集まって。 
いろんなことで騒ぎながらも、アタシは時々ユッコを観察した。
ユッコは、男4人どもと喋ったり、川ちゃんと話し込んだりしていて。
「旅行にいけなくなった理由」について、
話されると思っていたのに、そんな様子がないし。
オトコどもと喋っている姿は普通だった。
それが無理をして平気を装っているのか、
それとも本当に楽しいのかはアタシには判断がつかなかった。
だけど、いい気分はしなかった。

途中で、ユッコに
「キャンセルの仕方教えて」
「シングルとツインの差額を払う」
と言われた。
どちらも断った。

キャンセルの仕方は、単純に教えるのが面倒だったし、ホテルの部屋をどう使うかなんてまだ決まっていなかったので、断った。
シングルとツインの差額については、「馬鹿か、コイツ」と思った。
そんなこと言われて、差額を受け取ると思うの?
受け取ったりしない、なんてこと予想もついただろうに。
だけどそれを「言う」のは、自分の誠意なのだろうか。
「そのぐらいはするよ」という誠意。
それが、言っているだけのものに聞こえて、アタシは腹の中で毒を吐いた。
浅はかな言葉だ、と思った。

そんなことよりも、自分がどんな状況で、どんなことが原因で、今回の旅行をキャンセルしたのかを、丁重に謝りつつも相手のテンションを下げないように心配りして冗談のひとつふたつを織り交ぜながら陳謝せんか。

と思って。
それが出来ないくらいの、心のダメージなら。
なんで今アンタは、そこで、笑っていられるの?
結局は、自分がやらなくちゃいけない苦しいことから逃げて、
楽しいことを優先しているだけだ。
確かに、苦しいのなら、それが優先されてしまうものなのかもしれない。
だけど、最低限の礼儀を、果たす責任があるんじゃないの?
それが、「約束」をした人間の、義務だと、アタシは思う。
だけど。それはアタシにとっての望まれるべき行動で、義務で、常識なのだ。
他人には通用しない。そんなことはわかってる。
だけど腹がたったので、そう思った。

しばらくみんなでダラダラ喋った後に、ゼミ教室を出た。
ユッコと男どもと川ちゃんはまだ残っていて、
「帰らないの?」とユッコに聞くと、
「ん、いい」という応えがあった。

へえ。
原因は、話さないのか。
そういえば、男どもの中の1人の誕生日会をするのだ、という話を聞いていた。
いつやるのかは知らないが、今日なのかもしれない、と思った。
どうでもいいことなんだけど。
 
アネキに、「話聞いて欲しいから、今日飲んで帰ろう」って頼んだ。
アネキは察して、「うん」と言ってくれた。
飲み屋で、ユッコがアタシにダメ出しした時のことを、散々愚痴った。
アネキはウンウンと同意しながら聞いてくれて、
アタシが散々反論があったことを当然のように受け止めてくれて、
「だからこそ、 
 アタシはこの前も何度も、
 リョウに『それでいいの?』って聞いたんだけどね。
 途中で、ああもうそういうことにするんだ、
 と思って聞くのやめたけど」と言った。

アネキとアタシは、今回のことについての考え方は、
だいぶ方向性が似ていて。
自分が苦しくても、
周りの人が嫌な気分にならないように気をつけるくらいせんかい、
という考え方を持っていて。
アタシは自分の考えすぎに自信をなくしていた部分もあったから、
アネキが似た考えを持っていることに、安堵した。だいぶ。

人を傷つけないようにする、という考え方を持っていて。
それで今回、ユッコに「傷つけられ」て、
だけど自分が「傷付いた」ということをユッコに主張したら、
ユッコが「傷付く」のを知っていて。
だからこそ、自分が傷付いていないフリをする・・・、っていうのは。
自分の主義とか、ルールに反しないためのものだけど。
だけど、それじゃあ、こつちが一方的に損するよ、
っていう話しをしていて。
アネキが言った。笑いも入りつつマジで。
「うん。・・・リョウ、損してる!」
「やっぱりかー!!!」
って。なって。
だいぶ楽になった。

鳥取旅行は、結局アネキと2人で行って、
とても楽しかったです。
アタシは、
ほんとうに申し訳ないが性格は悪いので、
えへらえへらと笑っていても、
自分を傷つけた人間を、
許しはしない。
だけどもう、悪者にもなりたくないので。
悪者にならないやり方で、発散して行きたいと思います。ハイ。


以上。
とてつもなく長い猛毒でした。オソマツ。