たまに足を延ばすスーパーの道すがらにラーメン屋台の基地がある。
ラーメン屋台の基地は大よそ飲食物を取り扱うとは思えない貸倉庫の一角にあって、何台もの屋台がひっそりと待機している。そしていつ通っても夜の出撃に備えた仕込みをしていて何かを煮ているような匂いが漂っている。正直なところ、あんな場所で食べ物が作られているのかと思うとゾッっとする。お世辞にも衛生面で気を使っているとは思えないのだ。
子供の頃、屋台のラーメンが食べたいとねだると両親はあまり良い顔をしなかった。当時は何故、あんな楽しそうで美味しそうな食べ物を両親が嫌っていたのか理解出来なかったけれど、今ならその理由も分かるというものだ。しかし、それでも何度か食べさせてもらった覚えがある。屋台のラーメンは、たぶんそれほど美味しいものでは無かったと思うのだけど、家で食べるラーメンやお店で食べるラーメンよりも、ずっと美味しく感じた。夜、チャルメラの音が近づいてくるとやたらドキドキしたものだ。
身体に悪いものに限って美味しく感じてしまうから不思議だ。
しかし自分が親の立場になってみると屋台のラーメンを見ても「あんなものは子供に食べさせたくないな」と思ってしまう。しかし、その反面「あれは、あれで必要なのかも知れないな」とも思う。屋台のラーメンは衛生面や食品添加物のことを考えると決して好ましい食べ物は無いのだけれど、人は無菌状態の中では生きられない。本気でそういう類のものと戦おうとするなら、すべての食べ物を自給自足で手造りしなければならなくなってしまう。食べ物に関して気を使うことは必要だけど神経質になり過ぎるのも良くないように思うのだ。
娘はまだ離乳食をはじめたばかりで、ラーメンを食べるのはずっと先のことだけど、いつか「屋台のラーメンが食べたい」なんてことを言い出す日も来るだろう。きっと私は両親がそうしたように渋い顔をしながら、娘の願いを叶えるだろう。その時…果てして私は屋台のラーメンを食べて美味しいと感じるのだろうか? その時を楽しみにしつつ、今日の日記はこれにてオシマイ。