私が畑正憲さんのレストラン 「気まぐれキッチン ムツゴロウ」 のマネージャーだったときに、 畑さんご自身から聞いたお話です。
畑さんがまだ若かった時、仕事をクビになり、 役所に失業保険の手続きに行きました。
その当時はひどい失業率で、手続きには長蛇の列。。。 暑い中を何時間もかけて並び、 やっと自分の番がやってきました。
ホッとして書類を出すと、 書きもれがあるといって、けんもほろろ。 あげくの果てに、もう一度、 その長い列の最後に並べというのです。
それでなくても仕事を失って、 これからの人生に絶望と不安がいっぱいなのに。
「ふざけるな!」 畑さんは大切な書類を破り、粉々にして、 担当者の顔に投げつけて、役所を出てきたそうです。
どこをどう、歩いたかは覚えていません。 気がつくと上野公園のベンチに、うなだれて座っていました。
そういえば、家には身重の奥様が、 畑さんの帰りを待っているはず。 来月、はじめての子供も誕生するというのに。 これからどうしたらいいのだろうか。。。
その時、人ごみから「畑さん!」と呼ぶ声が。。。 その人は、かつて一緒に仕事をしたことがあるBさんでした。
「ここ2、3日ずーっと畑さんを探していたんですよ。 こんなところでお会いできて、ホントに良かった。 じつは、新しい試みで畑さんの経験とキャリアを生かして、 新番組を作ることが決まりまして。。。」
畑さんは、その時はじめて男泣きしたそうです。
|