twilight shackles
枷夜(かや)



 なくした時間を...:1

数えるほどしかないけれど
ご主人様に贈り物をしたことがあります。

はじめて贈った贈り物は......
今は、ご主人様の手元にはありません
小さな、小さなシルバーのブレスレットでした

ユニセックスなデザイン
福袋みたいな感じで中に入っていたもので
ご主人様が好きだといったブランドだったのです

それはとある理由で、
ご主人様の手を離れてしまいました

一緒に贈った(こっちが本当の贈り物)ものも
また、ご主人様の手を離れる予定だったのだけど
それは今も身につけて下さっています
私が贈ったものであることは、誰にも秘密で...

そういえば私が、ご主人様に贈るものはたいてい
「身につけるもの」のような気がしてきました
そだよな...
なんかネクタイとか買った気もするし...
常にお傍に居られるわけではない私の代わりに
ご主人様のお傍にいて欲しいという願いから...
かもしれませんね(苦笑)

けれど1番はじめの贈り物のブレスレットのことは
ずっとずっと心の奥に隠していました
はじめは思い出すたびに涙を流していましたから

思いが再び現れたのは...
そのブレスレットのデザインと同じものが
また同じブランドで出ているのを見つけたから
そのブレスレットを見つけたとき...
店内で人がたくさん居るにもかかわらず
友人と一緒に居るときにもかかわらず
涙を流しそうになりました

あのときの悲しみがまた自分の中に溢れていきました
ちょうどその時、海外出張だったご主人様には
悲しい思いを思い出したことは口にすることなく
しかしすでにこの時にはクリスマスに
このブレスレットを贈ろうと決めていました

ブレスレットを差し上げてもうすぐ1年...
ご主人様の腕に残る数日間の冷たい感触も
もう、いつのまにか薄れてしまっているでしょうか
ずっと、残していて欲しい...
その思いが、私とこのブレスレットを
再び出会わせてくれたのでしょうか






今日は、昼からお出かけしていました
早目にプレゼントを買いに行こうと思ったのです
ギリギリになって予定を組めず買えないよりは
早めに買ってしまおうと思ったのです

で、目当てのブレスレットを購入し
簡易プレゼント包装してもらいました
買った後で、似たデザインのものが安くあって
「他のものも見ればよかった...」と思いましたが
つけてみて、少し重みがあるこのブレスレットが
いいと思ったので、良しとしました

そのまま他の買い物もすべて済ませ、
時間が空いたのでご主人様と私が共有する
秘密の場所にひとりで行くことにしました
ご主人様は今日はお出かけ中です
彼女さんとお泊りでしたので、遅くなるはずです
それでも、後で用事があるから昼過ぎには別れると
仰っていたので会えたらいいな...という期待だけは
心の隅っこに持っていました

秘密の場所には買い物していた場所から
電車で40分ほどで到着しました。
そこからのんびり徒歩で向かいました
静かな場所でした
ぼーっと立ち、周りを見渡し、溜め込んでいたものを
整理すべくいろいろと考え事をしていました
空を仰ぎ、何もない空間に向かい、
悩んでいたことを投げかけたりもしました。
返ってくる筈はないのですが...漠然とした答えを
もらったような気がして、自分にとっては有意義な
時間の使い方だと思いました

そこから再び駅に向かって歩き始めました
向かう途中、彼女さんと別れたご主人様から
メールが来ました。そっけない返事を返すと
「どこにいる?」と返ってきて、場所を言ったら
おそらく「やっぱり、な」と思ったのでしょう
あまり驚いていないようでした

帰ろうとして電車に乗ったのですが発車した瞬間
「駅で待っていなさい」
と言われ大慌てで次の駅でUターンしました
待っているとご主人様が来てくださいました
帰る時点でご主人様からのメールがなかった私は
会えることを諦めていたのですが嬉しかったです

ご主人様の車で少しドライブをしました
出張で左ハンドル車に乗っていたご主人様は
少し扱いづらいな...と言いながら
乗っていらっしゃいました
しかし車は目的地ではなく...細い道を抜けて
よくわからないところで止まってしまいました
「...???」
「こうしたかったんじゃないの?」
...二人きりの時間が欲しかったんじゃないのかい?
ご主人様は笑って仰いました
「おいで、枷夜...」
ご主人様の手に導かれるまま私はご主人様の胸に
自分の顔をうずめてぎゅっと抱きしめました


2002年12月01日(日)
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