せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2001年12月29日(土) ぷれいす東京忘年会 東京ミレナリオ

 部屋に戻ったら、FAXが散乱していた。
 今日の午後からのMAの原稿だ。
 すっかり忘れていた。
 それでも、爆睡。
 目覚ましを12時にかけるが、まんまと寝坊。
 大慌てで、赤坂のスタジオへ出かける。
 南北線の溜池山王で降りると、地上はすっかり年末モードだ。
 人通りが少なくて、お店もほとんど閉まってる。
 僕もこれが今年最後のお仕事だ。
 今日は「ジャパンクリエーション」という素材見本市の紹介番組。
 ディレクターはノグのパートナーの安南嬢。
 昨日の舞台での発声と、マイクを前にした発声は全然違うので、少しとまどいながら、なんとか録り終える。
 来年もよろしくと挨拶して、スタジオを失礼する。
 スタジオのスタッフのみさとちゃんが、「絶対王様」、しかも「郡司明剛くん」のファンだと聞いてびっくり。3月の芝居をしっかり宣伝しておく。

 続いて、高田馬場のぷれいす東京の事務所へ。
 生島さんはじめ、ぷれいす東京のみなさんにご挨拶。
 先日の「VOICE」のことなど、楽しくおしゃべりする。
 荒くんと途中から「話し込み」モードになってしまい、そのまんま二人でお先に失礼する。

 実は、今日、東京駅丸の内口で開催中の「東京ミレナリオ」に行こうという計画があった。
 海外のデザイナーがプロデュースする、イルミネーションのイベント、丸の内のビル街の真ん中に光のアーチが並ぶ、とってもロマンチックなイベント。
 電車の吊り広告を見て、「行ってみたいよねえ」と思いながら、「一人で行くのはねえ……」と諦めてたんだけど、荒くんと「一緒に行こう!」ということになった。「エセカップル」としてね。
 「それって、余計淋しくない?」という声もないでもなかったんだけど(お互いに)、「行かないよりマシだわ!」と強引に決行。
 年末の東京駅は、かなり人気がないんだけど、丸の内口を出るあたりから、かなりな人の流れが目に付く。イベント感がもりあがる。
 まっすぐ会場までは行けないようになってて、少し遠回りの道へ誘導される。それにしても、たくさんの人が誘導要員として立ってる。無料のイベントでこれだけの人数を「雇う」のって、きっと協賛企業からたくさんお金が出てるんだわ。ていうか、こんな(ゴメン)イベントにお金を出す企業って、かなりイカすかも。
 ずっと遠くから見る、ミレナリオはとってもきれいだった。ただ、遠回りをさせてるわけじゃないのね。遠くからの方が、実はずっとずっときれいなんだと、後で、近くから見て、改めて思った。
 このイルミネーションって、結局は、道路に立てた仮設の木の枠に電飾を取りつけたものなのね。だから、近くで見ると、かなり「アラ」が目立つ。
 それが遠くから見ると、とってもきれい。
 同じ大きさのものが並んでるだけなのに、遠近法のせいで、まるで一つのオブジェのように見える。
 遠近法と言えば、道の両側のビルの稜線が、道路の一番向こうのイルミネーションの中心に向かってきれいに遠近法になってる。
 昼間、何もないところを歩いても気が付かないんだろうけど、ビルの稜線って自然界には絶対に見られない「直線」なんだよね。
 並んだイルミネーションは、ただそれ自体がきれいなだけじゃなくて、道の両側のビルに写り混んでる姿もきれいだった。
 イルミネーションをデザインしたアーティストは、これ全部をトータルでデザインしたんだね、きっと。それは、オフィスばかりの丸の内のビル街を違った眼で見直すってことなんだ。
 ただ、見るだけじゃない、そんな発見がとっても楽しかった。
 荒くんとの「エセカップル」は、途中からかなりどうでもよくなってしまった(ごめん)。
 僕は「素敵!」とかって言ってたから、廻りの人にはバレバレだったかも。
 でも、二人で来てよかったと思ったよ。黙って歩くより、おしゃべりしながら歩く方が絶対に楽しかった。
 すっごい人混みだったんだけど、大した混乱もなく、みんなが係員の誘導に従ってるのも印象的だった。
 無料のイベントで、しかも遠くからでも見える(ていうか、遠くの方がよく見える)っていうのもあるんだと思うけど、みんな実にいい顔をしてイルミネーションを見上げてる。
 これって、富士山を見てる顔を同じだと思った。
 埼京線とかに冬乗ってると、西側の窓から富士山が見えるんだよね。
 どんなに混んでて、イライラしてても、誰かの「あ、富士山だ」っていう声を聞いて、ふっと窓の外を見るとき、その人はとってもいい顔をしてるんだ。ほんとだよ。なぜだかね。
 後から思ったんだけど、その顔っていうのは、初詣の順番を待ってる顔にも通じるかもしれない。
 最近読んだ井上ひさしさんの本(「井上ひさしの作文教室」新潮文庫)は、文章の書き方についいて書かれたとってもいい本で感動して読んだんだけど、その中にこんな一節があった。
 「いい芝居ですと、お客さまは本当に神様で、生まれたての赤ん坊みたいな顔で、ずーっと、ゆっくり帰っていく」
 その通りだよね。
 そんな芝居を作らなきゃね!と思ったもんだけど、この「生まれたての赤ん坊みたいな顔」っていうのは、「いいもの」を見た時、いいものに向かう時の顔なんだろうね。
 いい芝居、富士山、初詣。並べてみたら、よくわからなくなったけど(笑)、とにかくそんなかんじ。
 年末のこのイベントは、イルミネーションを見るだけじゃなくって、いい顔がたくさん見れたってことでも、とってもうれしい、ほかほかと温かくなるものでした。


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