せきねしんいちの観劇&稽古日記
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荻窪の稽古場。 今日が二度目のヤマニシさんとタキザワくんと待ち合わせをする。 9時までの稽古場なので、少し早めに6時に。 タキザワくんは、HPを見て問い合わせをしてきてくれた21歳、男子。 まだうちの芝居を見たことはないんだけど、まあ、いらっしゃいということで来てみてもらった。「陽気な幽霊」の台本も読んでくれたそう。 荻窪は盆踊り。小学校の校庭から音頭にまじって、なぜか「サザエさん」のテーマが流れてる。まさか踊るためじゃないよね?
今日はマミーがお休み。で、みんなで6人。 このところずっとやってる呼吸と発声の基本から。 当たり前なんだけど、しばらくやってるだけで少しずつ変わってきてるのがわかっておもしろい。 毎日死ぬほどの訓練をしてるわけじゃないのに。だんだん自分の身体の扱い方がうまくなってきたっていうのかな。そんな慣れ。もしくは、同じことをくり返すことでなんとなく身に付いてくるもののような。こういう言い方は正確じゃないな。もともと出来てたはずのこと、発声とか身体をイメージするとか(俳優としてのじゃなくね)が、ふっとできるようになってる、そんなかんじ。 発声のまとめで、「外郎売り」を久し振りにやってみる。 だんだん身近になってきた自分にとっての「いい声」が、膨大な量の言葉になっていくとき、どんな大変さが生まれてくるのか。その大変さをどう乗り切るかということを感じながらやってもらった。 これまでも外郎売りをやるときには「それぞれの課題を見つけて」と毎回言ってはいたんだけど、「具体的にわかりやすく言うと結局こういうことなんだ」と思った。自分で言ってたくせに。 最後は、前回に続いて「みみをすます」をみんなで読んでおしまい。
こないだから計画してたマッスー主催の「花火大会」は延期。いつも誰もいないはずの公園が自転車でいっぱいだったので。盆踊り大会のせいらしい。 あきらめて渡る神田川にかかる橋の上から、73,000年ぶりに地球に近づいている火星がそれはきれいにみえた。 マッスーに「あれが火星だよ」と教えたら、「火星って燃えてるんですよね?」と聞かれたので、「燃えてるのは太陽!」と返事をして、しばらく太陽系の惑星について解説。
帰りの電車。 となりに座った人の本をつい読んじゃうことってあります? 自分が読んでる本より、そっちが気になっちゃうってこと。 今日がまさにそうだった。 北千住から乗ってきてとなりに座った彼が持ってたのは「電子辞書」。 座って開いたところが「たまたま」目に入ったんだけど、そこにあった文字は「眼精疲労」。 何だか気になってしまってね……それで、それから、見るともなく見てしまっていたんだけど、そのうちにわかったのは、彼が見てるのは、「広辞苑」と「逆引き広辞苑」らしいってこと。 で、その後、彼が呼び出しては意味(?)を見てた単語は、覚えてる印象的なものだけをあげてみると(字が大きかったんでよく見えたの!)……、「八大童子」「幾星霜」「飛竜頭」「風船爆弾」「ロジェ・マルタン・デュ・ガール」「ガラナ」「バビロン補囚」(順不同)。で、空いた向かい側の席に移る前の最後の単語が「黄金率」でした。これって「逆引き」のせいなの? どういうつながりなんだろう? 僕は、そのお兄さんの濃いめなビジュアルともども、「なんか、いいよねえ」と思いながら、ちらちら見てしまったんでした。彼の履いてる膝の抜けたジーンズからのぞいてる素足と交互くらいにね。これって視姦(byいっこうさん)ってことなんだろうか? 同時に「ボキャブラリーを知るってけっこうセクシーなことかもしれない」なんて思ったりしながら。
ちなみに、僕が読んでたのは、もう何度目かになる須賀敦子の「ヴェネツィアの宿」。 ほんとにこんな文章=思考のしかたが身に付いたらなんてすてきなんだろうと思う、僕にとっては先生のような本。 「ミラノ霧の風景」「ヴェネツィアの宿」「トリエステの坂道」「コルシア書店の仲間たち」「ユルスナールの靴」「遠い朝の本たち」。ほとんどこれで著作は全部。なので、何度も何度も読んでいる。 一番好きなのは、「ヴェネツィアの宿」の最後「オリエント・エクスプレス」。 でも、今日は、それより何より隣の電子辞書にくぎづけだったんでした(やっぱり視姦ね、これって)。
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