せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2003年10月15日(水) |
二兎社「萩家の三姉妹」@世田谷パブリックシアター |
開演前、すぐ近くのスタバで片桐はいりさんと遭遇。劇場のロビーでも。ドラマ「スイカ」の舞台になった三軒茶屋で出演者だった片桐はいりさんに会えて、不思議なかんじ。 休憩込みで三時間という上演時間がちっとも気にならない、無駄のない作劇に感動する。 初演で余貴美子が演じた長女「たーちゃま」を演じているのは、渡辺えり子さん。 フェミニズムの助教授という役柄は、まさにぴったり。舞台の上でどうしようもなく暴れ回ってるようなかんじが、切なくてよくわかる。 チェーホフの「三人姉妹」を下敷きにしながら、日本の現代のフェミニズムの芝居になっているのが素晴らしい。 ただ、全部の視点を盛り込んで、すべての登場人物にしっかり「ある立場」を代表させている点が、やや作劇上の技法に見えてしまうかもしれない。それにしても、その技法は見事というほかない。 次女役の南谷朝子さんがすばらしい。しがない主婦が一気に大恋愛のヒロインなっていってしまう、そのおもしろさと振り幅の大きさに感動する。 途中、地震があって、びっくり。芝居をしていた渡辺えり子さんが大きく「あっ!」と叫んだので、どうなることかと思ったら、そのまんま芝居は続行。客席も一瞬浮き足だったようなかんじでハラハラした。劇場での地震というのは、何度か経験があるけど、あんなに大きいのは初めてだ。小劇場ならいざ知らず、パブリックシアターは「却って安心」という気がしたのが自分でもおかしかった。揺れと一緒に照明の機材が揺れる「サワサワサワ」という音がずっとしていたのが、劇場らしい。 終演後のポストトークは、翻訳家の松岡和子さんと永井さん。松岡さんは、最近はシェイクスピアの翻訳で有名だが、キャリル・チャーチルの「クラウド・ナイン」や「トップ・ガールズ」を訳した方。「ロミオとジュリエット」のバルコニーを例に、これまでのシェイクスピアの翻訳が、男性の視点からのなされていたかということを、ご自身の経験をふまえて語ってくれた。 松岡さんは、この芝居を英語に翻訳したそうだ。「萩家の三姉妹」を日本で初めてのフェミニズム演劇だと思うと言っていた。永井さんは、それに対して、秋本松代さんの名前をあげていたが、フェミニズムというテーマを明確に意識した舞台は、たしかに「萩家」が最初ということになると思う。 「フェミニズム演劇」という言葉を何度も「ゲイ演劇」に置き換えて、いろいろなことを考えた。できることはまだまだたくさんあるんだと勇気をもらった気がした。 初日まで、あと35日!
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