せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2009年02月01日(日) 千穐楽

 14時開演「ジェラシー 夢の虜」千穐楽。千穐楽らしい、落ち着いた芝居になったと思う。
 19時開演「ミッシング・ハーフ」千穐楽。今日も開場前に、そうくんと一緒に小返しの稽古をしてのぞむ。「ジェラシー」が終わったせいか、不思議な身軽さが感じられる。そして、本番。ライブを生ききることができたんじゃないかと思う。二度目の「モロッコ」の語りのあと、拍手をいただいた。ラストのそうくんとの別れの場面の「モロッコ」の語り、映画に自分がとりこまれていくことへの戸惑いをこんなに感じたのは、初演以来でも初めての経験。そして、終演。

 全員でバラシをして、その後打ち上げ、始発まで。
 中国語指導のシム、振付の美弥子ちゃん、衣装の中西さんも朝までつきあってくれた。
 今回、キャストのみんなと飲むのは、顔合わせ以来。
 あっという間に朝になった。
 今回、ほんとうにいいキャストとスタッフに巡り会えたことの幸せに感謝。
 この場を借りて、お礼を申し上げます。
 ありがとうございました!

 戦前の上海という、とっても遠い時間と場所が、演じながらどんどん身近になってきたのは、スタッフのみなさんが創り出してくれた空間で、キャストのみなさんが、まさにその時間と場所を生きてくれていたからだと思います。
 一人一人にこの場を借りてご挨拶を。

 高山奈央子さん
 最高の川島芳子でした。こんなに人間くさい彼女は、これまで彼女を描いたどんな作品にも登場しなかったでしょう。ほんとに迷惑な(稽古場では「たとえるなら『和田アキ子』と言いましたが)彼女のキャラクターが、どんどん魅力的に見えてきたのは、僕にとってはとても予想外なことでした。そして、とてもうれしかったです。劇中、二人きりの場面が二回ありましたが、そのどちらもが、僕にとっては最高に楽しい場面でした。「女優対決」をねらって描いたわけではなかったのですが、俳優としてカラダが喜んでしまう、そんな時間をいただきました。ありがとうございました!

 日下部そうさん
 「ジェラシー 夢の虜」では、村松梢風をモデルにした作家、村西敏雄、そして、「ミッシング・ハーフ」では、徴兵逃れの映写技師、大江卓哉を、生き生きと演じてくれました。
 二本同時の稽古というだけでも大変なのに、膨大なセリフをよくこなしてくれました。
 「ジェラシー」での飄々とした女好きな作家ぶり、「ミッシング・ハーフ」での若々しい一途さ。どちらもすばらしかったです。
 「ミッシング・ハーフ」の千穐楽、僕は舞台の上に一緒にいながら、とんでもない高揚感、幸福感に包まれていました。普段はできないことができてしまうのが舞台、だとは、いつも思うことですが、あの時間はまさにそんな1時間50分だったと思います。素敵な旅をご一緒できたこと、とてもうれしいです。ありがとうございました!

 加藤 裕さん
 川島芳子の愛人、田山少佐を演じてくれました。男のいやらしさ、弱さ、強さ。人物を一色で塗りつぶすのではなく、いろんな面から見たそれぞれを演じてくださいという、僕の要望にきっちり応えてくれました。セリフにも書いたように「人間として最低」なキャラクターでありながら、とっても魅力的な人物として生きてくれました。ありがとうございました。

 相楽満子さん
 川島芳子の影武者として登場する従軍記者、梅原早苗を演じてくれました。
 クロカミショウネン18「祝/弔」を見に来てくれた時に、劇場の入り口で出演をお願いした今回の舞台でした。
 「夢の虜」というサブタイトルは、劇中の人物がみんなとりつかれている思いですが、その夢におぼれて滅んでいく、切ない役を存分に演じてくれたと思います。どうもありがとうございました。

 遠藤祐生さん
 去年の「新・こころ」、そしてクロカミショウネン18「祝/弔」、暮れのgaku-GAY-kaiと、僕の芝居にずっと付き合ってもらっていますね。
 今回は、蓄音機の修理をしに来たまま、タンゴを習うという理由で、ずっとマリーさんの部屋に通ってくる健ちゃんこと、木島健太郎を演じてくれました。
 物語をずっと外側から見ているという難しい役どころ、まさしく「目という役割」ですが、ていねいに演じてくれたと思います。舞台上でたくさんの心配をさせてしまってすみませんでしたね。どうもありがとうございました。

 岡田梨那さん
 僕が演じるマリーさんの同僚のダンサー、品ちゃんこと、大槻品子役を演じてくれました。戦前の上海のダンサーという雰囲気をまさに体現してくれたと思います。
 みんなが抱えているものがとんでもなくヘビーななか、ほとんど唯一、けろっとしているキャラクター、そのくったくのなさがとてもよかったです。
 今回バラシをしながら、出演のオファーをしたのは、共演していた「祝/弔」でおなじようにバラシをしている最中だったと気がつきました。あのときは、ほとんどからみがありませんでしたが、今回、一緒に芝居ができる楽しさを存分に味わわせてもらいました。どうもありがとう!

 藤あゆみさん
 劇団劇作家の劇読みvol.1、相馬杜孝作「在り処」で演出させてもらったのが一作年。いつか、ご一緒したいと思っていたのですが、今回、出演していただけてほんとうにうれしかったです。
 マリーが住む部屋の大家、林美矯(リンメイジャオ)を演じてくれました。
 セリフは全部、中国語とカタコトの日本語という大変さというか、ハードルの高さをよくクリアしてくれたと思います。
 特に、カタコトの日本語は、中国語指導のシムも絶賛していましたが、胸に迫るものがありました。どうも、ありがとうございました!

 石関 準さん
 「ジェラシー 夢の虜」では、川島芳子の秘書兼小間使いの千鶴子を、そして、「ミッシング・ハーフ」では、裏方の仕事が大変のこの芝居をささえてくれました。
 川島芳子をフライングステージが取り上げるからには、セクシュアリティの面からのアプローチが必要だと考えました。でも、川島芳子について調べれば調べるほど、セクシュアリティのゆらぎよりも、人生を演じてしまう、もてあそんでしまう、彼女のキャラクターに惹かれました。
 でも、今回、ごくごく普通の地味な女性をあえて演じてもらうことで、フライングステージらしさ、性のゆらぎのようなものが舞台上に生まれたのではないかと思っています。(僕が、演じているマリーさんも、同様ですが、彼女は設定からしてめちゃくちゃなことになっているので・・)。
 お疲れ様でした。

 岸本啓孝さん
 劇団員になってから初の本公演。田山少佐を密かに慕う部下、山本和人を演じてくれました。
 タイトルの「ジェラシー」というのは、タンゴの名曲からとったものですが、劇中に登場する人物が感じる「ジェラシー」の一番、シンプルな形をまっすぐに演じてくれたと思います。
 今回の舞台では、戦前の軍隊での同性愛的な感情というものを、なんとか舞台上にあげてみたかったのですが、本人でも自覚していないかも感情がどんどん明らかになってくる過程がとてもおもしろかったです。お疲れ様でした。

 大門伍朗さん
 「ミッシング・ハーフ」での四役の早変わり。初演以来の、マリーさんの召使い、宦官の手術人、歌舞伎役者四世沢村源之助、陸軍大将甘粕正彦。こんな四役を演じられるのは、大門さんしかいないと、今回、あらためて思いました。
 特に、沢村源之助の楽屋の場面、僕にとってはこの芝居でしか使ったことのない七五調のセリフまわしに、よく付き合ってくださいました。
 劇中、手を握ったり、肩を抱いたり、近い距離で話したりするシーンが何度かあるのですが、そのたびとっても近い距離で見る、大門さんの目から、暖かい力をたくさんいただいているのをかんじました。どうもありがとうございました!


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