せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2009年02月10日(火) |
富士見丘小学校演劇授業 |
2、3時間目の授業。授業の前に、篠原さんと待ち合わせをして、富士見ヶ丘駅前のドトールで、今日の授業についての打ち合わせ。 今日は、特活室と視聴覚室、二つの教室に子供たちは分かれ、僕と篠原さんがそれぞれの教室で授業というか、演出を担当する。 今回の舞台、「お芝居をつくろう」は、演劇を作ろうとする小学6年生たちが「どんな芝居がいいだろう」とディスカッションをするお話。彼ら(便宜上「外クラス」と呼ぶ)が考えた芝居が、舞台上で次々と演じられる(これら劇中劇に登場するクラスを「中クラス」と呼ぶ)。この芝居の中には、さまざまなキャラクターが登場する。転校生、火星人、魔法使い、先生や役人たち。 今日から、本番まで成田独歩さんこと、渡邉力さんが見学に来てくれている。彼は、今年の六年生を去年、一度教えている。「どんな授業をしたの?」と聞いたら、「絵を元に芝居をつくってもらった」とのこと。1年ぶりの再会だ。 初めに、特活室で子供たちに、今日の授業の目的について説明する。今日は、前回の授業で、おおざっぱに伝えた位置と動きを、細かくていねいに、劇全体を通じてやってみる。前回の授業からの変更点もあるのでよろしくと。 篠原さんは特活室で「外クラス」、僕は、視聴覚室で「中クラス」プラス、劇中劇の登場人物たち全員を相手にしての授業を始める。 最初に、部屋全体を自由に歩いてもらう。ゆっくり、速く。そして、僕が手を叩いたら、ストップモーション。今回、「中クラス」のみんなには、このストップモーションを何度もやってもらうことになる。まずは、そのためのウォームアップ。 冒頭から、出はけと位置についての説明をして、演じていってもらう。子供たちは、セリフが全部入っているので、どんどんすすむ。誰も台本を手にしていないので、いちいち書き込んで覚えてねということもあえて言わない。今、この場で覚えてもらう。わからないことがあったら、僕たち(関根、篠原)や先生方に聞いてくれれば、わかるからねと言いながら。そのために昨日まとめた演出プランの共有なのだ。 稽古をしながらの細かい修正は、今日、僕の方にずっとついていてもらうようお願いをした馬場先生に書き留めていってもらう。同様に篠原さんの方には、平田さんがついていてくれる。担任の先生、田中先生と金丸先生は、両方の教室を往復して全体の様子を見ていてくれる。 4時間目は体育館が空いているので移動しようという予定だったのだけれど、稽古が白熱してしまい、また移動すると時間が足りなくなって終わりまでたどり着けないかも知れないと思ったので、そのまま、視聴覚室で続行(特活室も同様)。 劇中のストップモーションの場面、さっきのウォームアップではあまりぴんと来なかっただろうこの動きが、劇中に何度も登場するうち、子供たちの表情が変わってきた。 「かっこよく止まるにはどうしたらいいんだろう?」「止まるためには動いてないといけないね」などと細かく、ダメ出しをする。 ストップ、解除、ストップという連続の動きも登場する。順番にセリフを言うだけではない、カラダも一緒にそこにあるおもしろさが、どんどん生まれてくる。 中クラスの子供たちの一人一人が何を思うか、人の話をどう聞くか、それが、どんな行動になるかなどなどを次々明確にしていく。わかりやすい人間関係が立ち上がると、俄然、一人一人が生き生きとしてくる。大人っぽい女子、子供っぽい男子、少しクールな男子などなど。あちこちで、魅力的なキャラクターが生まれてくる。また、そんなお互いを見ることで、自分のキャラクターが逆に見えてもくる。 今日は、中クラスだけ、つまり、外クラスのみんなが考えている想像の世界の登場人物たちだけの場面をつくっている。 中クラスの登場人物の様子を、少し離れたところで、外クラスのみんなはずっと見ている。今日は、そのこともきちんと説明して、出番の終わった、またはこれからのキャラクターにその位置にいて見ていてもらうことにした。 外クラスの人物は、中クラスには混ざってこないで、演技エリアの外から見守って、セリフを発するのだけれど、劇の終盤、その構造がくずれていく。外クラスのみんなが、中クラスの中に入ってくるのだ。 ただ、中クラスの人物からは彼らは見えない。外クラスの人物は、中クラスのみんなが見えている。二つの全然違う次元が同時に存在するのだ。子供たちに、その説明をする。今はいない(となりの教室にいる)外クラスの人物の役を僕がやって、その場面をつくってみる。子供たちから「かっこいい」という声があがった。 この子たちは、次元の違う場面の重なりあい、舞台ならではの演出のおもしろさを知っている。そして、それを「かっこいい」と言える。演劇授業の積み重ねは、上手にセリフがしゃべれるというようなことではなく、こういうセンスが彼らの中にいつのまにか根付いていくことなのかもしれない。 後で篠原さんに聞いたら、外クラスでも同じ場面で同様の反応があったそうだ。演出家として、こんなにうれしいことはない。 全部の役の位置と動きを確認して、あとは最後の全員が登場するシーン、外クラスと中クラスが一緒になる場面だけを残して時間切れ。今日はここまでにする。それでも、なんとかラストまでたどりつけてよかった。 特活室に全員集合して振り返り。外クラス、中クラス、どちらの子の顔も生き生きとしている。みんなでおもしろい、ちょっと大変だけど、できたらかっこいいことに取り組んでいるということのおもしろさが感じられるよう。もちろん、大人達もわくわく楽しい気持ちでいっぱいだ。 給食をいただきながら、大人達の振り返り。澁谷先生、染谷先生と、衣装、音楽の打ち合わせ。火星人の衣装、いいかんじに仕上がりそうだ。とってもべたな火星人。エンディングの曲が生徒の作曲であがってきたのを聞かせてもらう。これもいいかんじだ。馬場先生、金丸先生、田中先生とも打ち合わせ、今日の感想と子供たちに伝えてほしいことなどを話す。 来週は、2時間合同で体育館での授業。冒頭の歌とダンスから、全体の位置と動きを、外クラス、中クラス一緒に確認して、芝居をつくっていく。 今日はお互いに見ることができなかったそれぞれの芝居が、一緒になるとどうなるのか、子供たちがおもしろがってくれるとうれしいと思う、ラストの場面の位置と動きを、もういちど検討してみよう。もっともっとおもしろくなりそうだ。
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