せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2009年02月20日(金) 朗読劇「蟹工船」

 非戦を選ぶ演劇人の会のリーディング「9条は守りたいのに口ベタなあなたへ」でご一緒した、板倉光隆さんが出演している小林多喜二の「蟹工船」の朗読劇を観に(聞きに)、三鷹の武蔵野芸能劇場へ。
 伽羅というユニットでの公演で、キャストはみなさん声優としてはベテランの方ばかり。
 開演前に上演時間が1時間50分と知り、これはかなりつらいんじゃないかと思ったのだけれど、全然そんなことなかった。あっという間だった。
 北洋に船で出て、蟹を捕って加工する労働者達の最低最悪の生活と、資本家による搾取と、ひどい労働条件の中での命がけの闘いが描かれている「蟹工船」。
 イデオロギー的なものがクローズアップされて、やや青臭いものになってるんじゃないかという予想はまるっきり裏切られた。
 俳優ってすごいなあと思った。
 非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングでもいつも思うことだけれど、俳優というのは「伝える」プロだと思う。
 文字で読んだりしただけでは、ただのメッセージにしかならない言葉が、俳優の肉体、声とカラダを通して出てくると、生き生きとしたものにかわっていく。
 今日、出演の俳優さんたちはみなさんとてもすばらしかった。一人で何役もの人物を演じ分けていく、その技術が当たり前にあるのがすごい。語られる色が見えてくるような、そんなリーディングだった。
 小林多喜二が書いた言葉や世界は明らかにそこにあるのだけれど、何よりもまず、そこに人間がいた。人間がちゃんといる芝居は、いくらでも観ていられるんだと思った。
 話の内容ではなく、むしろ、俳優の力のすごさに感動して泣けてしまった、そんな舞台。
 終演後、板倉さんにご挨拶。ほんとにひさしぶりの山崎くんにもばったり会って、近況の報告など。
 今日は、小林多喜二が拷問により殺された日ということで、ロビーに彼の享年である29本の薔薇が飾られていた。
 終演後、どうぞお持ち帰りくださいと言っていただき、一本をいただいて帰る。
 びっくりするくらい大きな真紅の薔薇の花。家につくまでにややぐったりしていたのだけれど、水切りをして活けたら、しっかり蘇ったのがとてもうれしい。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加