せきねしんいちの観劇&稽古日記
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富士見丘小学校の演劇クラブの発表を見に、富士見丘へ。 朝の全校集会での発表、開演は8時30分。上演時間は15分とのこと。 学校の前の横断歩道で、一昨年の卒業生、中学2年生のマツザワくんに「関根さん」と声をかけられる。ときどきブログ見てますと言われてびっくりするが、とてもうれしい。 演劇クラブの顧問、馬場先生に聞いたところによると、何を盗むかという話し合いの中では、理科室のマンモスの毛や、校長先生の私物といったアイデアもあったそうなのだけど、結局、図工室の前に飾られた「モナリザ」の絵ということになったとのこと。 今日までに学校中に「モナリザはいただく」という謎の張り紙が貼られていた。 一年生などは「どろぼうか来ちゃう!」とあわてて窓に鍵をかけたり、泣き出してしまった子もいたそう。すごいなあ、この演劇が学校中の一大事になってるかんじ。 そして、全校集会での発表というのもすばらしい。 泥棒が来るという噂を聞き、どうしようと話し合う子供たちの一群。彼らは本舞台にせいぞろい。予告状の他に、何か泥棒のことで知ってる人はいない?という問いかけに、客席にいた子が手を挙げて話し始める。この二人の子はどちらも演劇クラブの子なんだけど、当たり前のように客席と一緒に芝居しているそのかんじがすごい。そして、声がよく通っていることといったら。先週(?)学校前のローソンを襲撃したものの失敗した泥棒達の様子を、きっちり語っていった。 この仕込みの二人の他に、一年生の男の子が、僕も・・と手を挙げていたのが、おかしかった。担任の先生があわてて、止めに行ったのだけれども。 泥棒たちは、体育館の後ろからこっそり入ってくるので、観客になる各クラスには「泥棒たちはこっそり入ってくるので、見つけても騒がないように」というお願いが、担任の先生方から伝えられていたそうな。それもまたおもしろい。 こっそりやってきた泥棒たちは、あっけなくつかまってしまうのだけれど、物語の他愛なさはさておくとして、全校生徒と一緒になって生み出されていく、この時間、演劇的な時間がすばらしかった。 「お芝居をつくろう!」で活躍していた何人もが、違う役を生き生きと演じていることが、もう身内の感覚で楽しい。15分という短い上演時間だったけれど、大満足。お疲れ様でした。 夜、シアター1010のミニシアターで、演劇集団池の下公演「疫病流行記」を見る(作:寺山修司 演出:長野和文)。 俳優はみんな白塗りで、演技も多分に様式的。予想していたイメージは、「アングラ」だったのだけれど、思っていたより、さらさらときれいな舞台だった。 寺山修司の戯曲が持っている毒の部分が、きれいに洗い流されてしまっているような印象。 どんなにきれいにやっても、きれいになりきれない、アクのような部分が、寺山修司にはあるように思っていたのだけれど、そうとも言えないのだと気づかされる。 そのアクは、戯曲ではなく、俳優の身体に依るものなのかもしれない。もしかすると、これから、寺山修司の劇世界の表現は、だんだんむずかしくなっていくのかもしれないなあとも思った。
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