*未完成のお城*

2003年05月01日(木)  そして不安定になる日。

日付を見て震えた。
また、あの日が来るから。

気付かなかった。
…もしかしたらわざと、気付かなかったのかもしれない。

今日から5月。
知った途端に、自覚した途端に、気分が不安定になる。

5年前の、あの日のニュースをあたしは一生忘れないと思う。

ニュースキャスターが淡々と読み上げたその事実を
ちゃんと全部聞こえたのに、脳は理解することを拒んだ。

ペンションのロフトから見下ろした25型のテレビ。
今でも鮮やかにその瞬間を思い出せる。

「自宅」でもなく「ペンション」なんかで
あんな浮かれた場所で聞けるニュースじゃなかったよ。

「……嘘だぁ」なんて、馬鹿みたいに声が震えて
もう一度、「嘘だ」って言った時にはもう泣いてて。
一度涙が出ると止まらなかった。

急に泣き出したあたしに
妹や従妹たちは不思議そうに、それでも心配してくれて
ロフトでタオルケット頭から被って泣いてるあたしに
父親が「バーベキュー焼けたぞ」なんて庭から暢気なでかい声で誘ってきて

「幸せな日常」の中で、ひとり、「突然の訃報」の中に取り残されてた。

バーベキューなんて食べる気になれなくて
泣いて 泣いて 泣いて 泣いて 泣いて
いつの間にか泣き疲れて寝てた。

涙や色んなものでぐちゃぐちゃになったあたしを
先に起きてた母親が見つけて驚いてた。

「大好きな人が死んじゃったよ」

認めたくないけど、どうにもならない「事実」を告げたら
母親は静かに ひとこと だけ

「たくさん泣いて 泣いて 泣いて ちゃんとそのことを受け止めなさい」

そう、言った。
目を逸らしちゃ駄目だって。
逃げても「現実」は変わらないから、って。

それから暫くは
ふと思い出すたび泣けてた。

講義中だったり
通学途中のバスの中だったり

俯いて
手を握り締めて
いつも少しだけ泣いた。

今でも
この時期になると途端に気分が不安定になる。

どうしようもない喪失感はまだ拭えない。

アナタが逝ってしまってから
たくさんの季節が移ろいでいったけれど
この季節は 5月は
やっぱりまだ
あたしには辛い んです。

今日も 明日も
きっと
また少しだけ

泣いているかもしれません。


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hinase