禁忌を…冒してしまったかもしれない。 過ぎてしまったことを揺り起こしてしまったかもしれない。 忘れていたかもしれないことを、思い出させてしまったのかもしれない。
どうして?と、訊かれれば、「寂しかったから」としか言えない。
メールへの返事は電話だった。 何ヶ月ぶりかに聴くその声に、恐怖が半分、不思議が半分。 自分でも自分の気持ちが良く分からない。
何故、メールしてしまったんだろう。
今となってはそう思う。 どうして、何故、なんで、と疑問符ばかり繰り返す。 でも、きっと、あたしが寂しかったからなんだ。
寂しさで縋ってはいけない人なのに。
もう傷つけてはいけない人だ。 そう思う。 たぶん、傷つけたであろうあの日からずっと、後悔している。
優しい人だから、もう気にしてないかもしれないけれど。
嬉しそうな声が心苦しかった。 あたしはそんな声で喜んでもらえるほど「良い女」じゃないのに。 あなたが思うほど、優しくも、可愛くもないのに。
これからまた、繰り返すんだろうか。
あたしは恋の出来ない欠陥品だと思う。 あなたとなら出来ると思ったけど、でも、無理だった。 それでもまた、あなたと、繰り返すんだろうか。
もう少し、時間が欲しい。
今は時間が足りない。 あたしの心の余裕も足りない。 足りないものだらけで、崖っぷちだ。
春がきたら。
ねぇ、春がきたら、なにかが変わってるかもしれない。 あたしが「其処」へ戻って、ひとりきりじゃなくなって、社会に出て。 時間の余裕も心の余裕も出来たら、なにかが変わってるかもしれない。
恋に変わるのはそれからでもいい。 恋になれるなら、それからがいい。
あたしのワガママばかりだけれど、受け入れてもらえるならば。
あなたとなら、恋を始められると思ったこともあったんだ。 それは本当のことなんだ。 あたしの15年の片想いを終わらせるのは、もしかしたらあなたかもしれないと。
本当に始められるだろうか
春がきたら
あたしの心にも その春は 訪れるだろうか。
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