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天井 - 2005年06月21日(火) 夏至の日に。 歯科病院の診察台に寝転がりながら、ふ、と甦ってきた記憶。 「寝たきりの患者さんの中には、天井との距離を測って生きている方もいて。 突然起き上がらせてしまうと、驚かれたりしたものよ。」 あれは誰が教えてくれたのだろう。 狛のゼミ室で、何気ない会話の端っこにあった言葉で。 そのときは、驚きもあったけれど、実感はあまり湧かなかったような気がする。 言われてすぐに見上げた天井は、既に見慣れた配管が剥き出しの冷たいコンクリート。 夜は就寝と同時に電気を消してしまうので、天井との距離など考えたこともなかったし。 昼寝をしていても、眼を閉じて眠ってしまうので記憶には残っていなかったし。 だから、久し振りに眼を開けたまま天井を眺めたときに、 フラッシュバックのように甦った言葉だったのだと想う。 1時間という短い診療時間の中では、天井との距離を測りきれなくて。 起き上がったときに、何の違和感も覚えなかった事実が、少し痛かった。 天井との距離の違いに驚くほど、彼らは長い時間天井だけを見ているのか、と。 その衝撃に、眩暈がした。 外の景色の移り変わりがその眼に映るように。 そんな現実を変えたいと、改めて想った。 ...
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