TOM's Diary
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2008年02月20日(水) |
イージス艦事故の報道を見ていて思うこと |
自慢するわけではないが、中華航空機炎上事故のとき原因は発生直後のニュースを見ていて一時間後には概ね予想がついていた。しかし航空評論家などといわれる人たちはいい加減なことばかり。
たしか、エンジンパイロン内の樹脂の燃料ホースが千切れたか、外れたかする可能性はあるだろう。しかし、燃料漏れが起きたのは誘導路をエプロンに戻っている途中、気圧が離陸から着陸までを通してもっとも高い地上で、しかもエンジンがアイドリング状態の時だ。千切れたり外れるならホースの内外で圧力差が大きい飛行中だろう。飛行中は雰囲気の気圧が低い上に、ホースの中は燃料ポンプで加圧された状態で流れているのだから。
誘導路で燃料が漏れ始めたとしたらなにが考えられるか? 普通に考えれば誘導路を移動中に航空機、特に翼周辺ではなにが起こっているか考えればすぐわかる。着陸に備えて展開されていたフラップを収納する動作が翼周辺では行われていたはずである。そんなことは評論家のみなさんはご存知のはずだ。翼の中には燃料が満たされている。フラップを収納すると言うことはフラップの支柱が翼の中に入り込んでいくわけで、その支柱がなんらかの要因で曲がっていたら燃料タンクに突き刺さることもあるだろう。
原因がわかってから得意げに言うことではないし、実際には支柱が曲がっていたわけでもなく、また、正確には私が考えていたフラップではなく、前縁フラップ側の問題ではあったが、評論家のみなさん方はまったく違うことばかり。想像で物を言うのも良いが間違っていたらごめんなさいと言うのが筋だろう。
さて、イージス艦と漁船がぶつかったわけだが、軍事評論家やらがなんか言ってる。イージス艦なんだからレーダー性能が良いのにどうなってるんだ、なんて言う評論家もいた。しかも水上レーダーと防空レーダーの二つがあり、水上レーダーもすごい性能なはずだなんて言っていた。私も詳しくはないが、イージス艦は防空性能を良くしたミサイル護衛艦のことであり、水上レーダーは普通のはず。思ったとおりその日のうちに水上レーダーは普通の艦船と同じだと報道していた。 少しくらい、裏を取ってから報道したらどうなんだ。
あと、評論家ではないかも知れないけれど、赤灯が見えたほうに回避義務があると報道されているが、それも違う。 極端な例で言うと加減速が容易に出来、かつ進路変更も容易にできるモーターボートと減速に何キロもの距離を要し、天蛇をしてから実際に向きが変わる(進路はまだ変わらない)までに時間を要する原油満載の巨大タンカーが衝突コースを航行していたとしよう。モーターボートの船長が、巨大タンカーを目視し、緑灯(左舷灯)とマスト灯が見えたからと言って保持船として速度とコースを維持したならばそれは自殺行為である。海上衝突防止法ではそういう場合を想定して、「操船の容易な船の側が操船が不自由な船を避ける行動をとる」「お互いが相手の右側を通行すること」と書かれている。 報道では当初、イージス艦は操業中の漁船を回避しなければならない回避義務船であると報じられていたのは、操業中の船は操船が不自由な船とみなされるからである。しかし、操業中でなければ、世界最大級のイージス艦よりも漁船の方が早世の容易な船に当たり、必ずしも漁船が保持船になるとは言えないのである。 漁船が操業中ではなかったと判ったとたんに赤灯が見えたイージス艦が回避義務船だと内容が変わったが、いったい誰の想像だろう。 結果から言うと緑灯が見えていたということならば、操船の容易さと合わせて考えて、イージス艦側は間違いなく保持船である。また、緑灯が見えたという証言が虚偽だったとしても、漁船は保持船ではなく、漁船側にも回避義務があったはずだ。
おそらくこの事故の記事を書いている記者全員が海事には詳しくはないかもしれないが、この程度のことはインターネットで少し調べれば判ることである。評論家から意見を貰うのは良いが裏は取るべきだろう。
イージス艦のワッチが不十分だったのではないかと言う指摘もされている。
事故があった日は6時25分ごろ(東京)が日の出である。よって東の空がようやく明るくなるかどうかと言ったところだろう。視程は40km以上だったとしても灯火がなければ目視は難しかったに違いない。が、そんななかベテランの漁師がわざわざ灯火を消して航行するわけがない。船団のすべてがちゃんと灯火を点灯していたに違いない。
さて、イージス艦の側からその船団を見たらどのように見えるだろう。 船団がどのような陣形を取っていたか判らないが、赤や緑や白の灯火がたくさん見えて来たに違いない。これらの灯火が漁船の船団だと判明するまでにはある程度の時間が必要だろう。さらに、船団の中の船がどのように動こうとしているのか、一隻見て行くには相当な時間が必要だろう。 必ずしもワッチが不十分だったとは言えないのではないか。 評論家だかなんだか知らないが想像力をもう少し豊かにしたらどうだろうか?
まぁ、なにも情報がないうちから漁船の船長を批判するような報道がないのはせめてもの救いだと思う。平等性にかけるとはおもうものの・・・
ちなみに、私がイージス艦の艦長なら、こんな場合どうしただろうか。 まちがいなく、最初に船団を見つけた段階で機関停止、状況によっては後進をかけさせるだろう。なにしろただでさえ交通量の多い東京湾の近くであり、しかも時間といい場所といい、漁船が行きかうもっとも交通量の多い時間帯であることはわかっているはずである。そうすれば間違いなく事故は防げたはずだ。きっとだれでもそうするのではないかと思うのだが。
もちろん漁船の側にも同じことが言える。船団の中の多くの漁船はどちらが保持船か回避義務船かに関係なく、結果的に衝突しないよう回避行動を取っていたようだし、衝突した漁船も同じようにもう少し適切な回避行動を選んで居たなら事故はなかったはずだ。
しかし、状況がより把握困難なイージス艦の側がもう一歩手前で回避行動を取っていたならこんな問題にはならなかったのは間違いないだろう。
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