【読書】ライトジーンの遺産

ライトジーンの遺産 神林長平 著 ソノラマ文庫

Amazonでの紹介ページ:ライトジーンの遺産ソノラマ文庫

感想:
 とてもハードボイルドで、呆れるほどにSFだ。

 神林長平氏の作風と言えば、言葉を操り、言葉に操られ、という雰囲気だが、本作に関しては、その影はあまり表に出てこない。雰囲気だけで言えば、「雪風」の感触に似ている。
 遠い未来を舞台として、臓器が自己崩壊を起こすという難病がごく当たり前のものとして認識されている世界をバックボーンに、その世界に二体しかいないという、完全なる「サイファ」の能力を持つアンドロイドの菊月虹(コウ)の視点から物語は語られる。

 前編にわたり、中年を主役としたSFハードボイルドの王道とも言えるようなストーリィで、こういう作品が好きな読者(僕のことだ)にとっては、とても楽しく、わくわくしながら読み進めていくことが出来る。
 ただ、作中の一編、「ヤーンの声」には、そう来るかぁ!、と唸らせられた。
 ネタバレになるのであまり詳しくは話せないけど、クライマックス一歩手前でのこの一編は、一筋の清風のように、心に光を与えてくれる。
 その感触は、始めから先入観無しで読み進めていなければ味わえないものだと思う。

 他の作品にはない、また違った神林テイストです。
 良作。
2003年11月08日(土)

日々 / いけだ