【読書】螺旋階段のアリス

螺旋階段のアリス 加納朋子著 文春文庫


感想:
 静かに流れる日々の中に、こんな素敵な風景が紛れ込んでいるとすれば、人の営みも、そう捨てたものではないのだなぁと思えるほどの、優しくて、甘いシーンがここにはあります。

 加納朋子さんらしい、ほのぼのとした、柔らかい短編集です。
 ミステリィというカテゴリィなのに、殺人事件は起こりません。
 そして、どろどろとした、後味の悪いお話もありません。
 いや、そう言いきるのは語弊がありますね。
 シチュエーションの中には、不合理な暴力や眉をひそめるようなものもあります。
 しかし、加納さんの繊細なタッチによって描かれるシーンは、その醜悪さをぼやかされて、さらっと流してしまいます。そして、大団円なラストシーンでわずかに残った陰りすらも、すっと拭き取られます。
 読了後、ふわっとした暖かみが胸の奥の方に感じられる、良い作品だったと思います。

 殺伐とした、ハードボイルドな作品も好きですけど、こういった優しい作品はもっと好きです。
 なんとなく、心の表面が柔らかくふあふあになるような、そんな気がします。
2003年11月16日(日)

日々 / いけだ