| 【読書】シャドウ・オブ・ヘゲモン |
シャドウ・オブ・ヘゲモン(上)・(下) オースン・スコット・カード著 田中 一江訳 ハヤカワ文庫SF
感想: エンダーが去った地球を舞台に繰り広げられる、覇権争い。 その鍵を握るのは、バトルスクールから帰還した掛け値なしの天才集団である子供たちと、ロックでありデモステネスであったピーター・ウィッギンであった。
この作品は、シリーズ作品、少なくとも、「エンダーズ・シャドウ」を読んでいなければ、作中に出てくる単語や人物、背景が理解できないので注意です。 少なくとも、ビーンという少年やペトラという少女、アシルという青年が何を考え、どういった道を歩んできたのかが分かっていることを前提に、話が進められています。
カードの作品は、小難しい話を軽快に読ませる点が好きです。 本作も、複雑に絡み合った国々の利害関係やネットを用いた情報のやりとりなんかを軸に、主にアジア圏を舞台とした近未来の戦争を鮮やかに描き出しています。 人によっては嫌悪感があるかもしれませんが、カードの描く宗教観もなかなか興味深いです。
でも、世俗的かもしれませんが、一番読んでて面白いのは、ビーンとペトラ、アシル、カーロッタ、グラッフ辺りの人間関係です。 お互いに相手を憎み、いかにして叩きつぶすかを考える。 相手を愛し、その人のためになら命も捨てる。 懐疑や裏切り、嫌悪を封じ込め、安全な無表情で接し、悩む。 決して表に出さないけれど、心の奥で繋がっている信頼。 相手の裏をかいたつもりが、さらに上手な戦略で足を取られる。 そういった、言葉にしにくい部分ですらも、綺麗に表現できてしまうのですね。 だから、ラストシーンがすごく心に響きます。 そこまでに至った過程を思い返して、あぁ、良かったなぁって思えました。
本作は、タイトルの通り、ビーンが主役でした。 次作はピーターが主役になるのかな。 どんな展開になるにしろ、楽しみなことに変わりはありません。 結構早めに出そうなことが、解説に書いてあったので、わくわくしながら待つことにしましょう。
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2003年12月23日(火)
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