【読書】運命の囁き

運命の囁き マーセデス・ラッキー著 山口 緑訳 創元推理文庫


感想:
 ヴァルデマール年代記の最新刊であり、新シリーズ「ヴァルデマールの風」の第一作。
 登場人物が変わり、物語の舞台も変わった。
 だけど、根底に流れる世界観はがっちりと根を張り、揺らぐことなく全体を包んでいる。

 本シリーズは、ヴァルデマールの王位継承者である<使者>エルスペスの物語と、ペラジールの森に住む"鷹の兄弟"ク=シェイイナ族の<見張り>である<暗き風>の物語が、一編ずつ入れ替わり立ち替わりながら進んでいく。
 今までの作品と比べ、剣や魔法、そしてアクションシーンは少し影を潜めたかな、と感じた。
 むしろ、個々の心の機微や風景の描写、信頼や愛情の繋がりなどが主軸に置かれて紡がれている。
 もともと、著者はそういった描写に長けており、自然に感情移入できる。
 エルスペスとスキッフの関係、<暗き風>と<暁の炎>の関係。
 <共に歩むもの>と<使者>、そして<もとめ>。
 <見張り>と<長老>、鷲獅子、<変化の子>。
 こういった者たちが、それぞれの思惑と思慕が絡み合いながら、最後には一つの目的に向かう。

 ラッキーの作品は、最後がハッピィエンドで終わるから好きです。
 結構、途中でグログロになることが多いけれど、きちんと整理して、すっきりとした後味に仕上がる術は健在でした。
 一応、本シリーズは全三作らしいのですけど、エルスペスの今後が気になります。
 あと、その他の脇役たちの今後とか、前作までの登場人物のこととか、海外の作品は、シリーズの数が増えるたびにぐんぐん世界が広がっていくので、誰が誰だったかを覚えるだけで一苦労です。
 とりあえず、もうタルマとケスリーは出ないのかな?
2003年12月21日(日)

日々 / いけだ