空虚。
しずく。



 真夜中の情事。

本当に満たされるのは、自慰なんかじゃなく、こっち。

精神的な満足度はそれの比じゃない。


今日のために、カッターの刃もあらためた。

深夜二時、揺り椅子に腰掛け、カッターを右手に持つ。

大きく深呼吸をして、ビデオの再生ボタンを押す。


・・・私は、新鮮な方が良いな。

腐ったらもう、人間って感じがしないもの。

でも、この俳優さん、足がすごくキレイ。男なのに。

・・・舐めてみたいな。でも男なんだよね。


腹に手を突っ込んで、内臓を抉り出す様を思い描く。

ああ、さすが。こんだけリアルだと、ちょっとイイ感じ。

でも、どれがどれだかサッパリだ。


生唾を飲み込んで、刃を当てる。

あ、血飛沫。・・・すごい、キレイ。

流れ出した血を唇にとって、舐める。

そう、口紅を塗るように。


・・・やっぱり、うるさいな。

喘ぎ声も、叫び声も。

黙ってろよ。そんなの聞きたくないんだ。

死なないでね、ヤだからね?

そろそろさよなら、愛してる。

この後も醜くなっても、ずっと。

「・・・自己中。」


深呼吸を、一つ。

ああ、そうそう、これだ。

真っ白くて冷たくて・・・もう取り戻せない。


ビデオはあくまでビデオ。

一番大事なのは自分の想像。

じゃないと、満たされない。


「血・・・。」

最後の、首挿げ替えるとこ、

真っ白いシーツが真っ赤になって、

壁に血が飛び散って、

肌にも返り血がついて・・・、

すごくキレイだったな。

私もあんな風に血、浴びてみたいな。


血液を、肌に塗って、

もちろんあの人にも塗って、

ちょっとずつ舐めるの。


左腕を切って、唇を当てて、目を閉じる。

浮かんだばかりの映像を想像したまま、舌を這わせる。

これは自分の腕だけれど、そうじゃない。

「きれいだよ・・・。」



二時間、たった。

ビデオは、終わってた。

口元の血を舐めとる。

カッターの刃を拭って、しまった。

ビデオを抜き取り、ケースにしまう。

「さて、と。」

目を閉じて、あける。

鏡を見て、笑う。


また明日から、普通に戻る。

とても満たされた、夜。

2002年09月11日(水)
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