空虚。
しずく。



 おちる。

朝から異常に眠かった。

行き帰りの電車の中では完全に深い眠りに落ちてた。

記憶が飛んだときに、似た、感覚。

仕事の間も、ずっと上の空だった。

目を閉じたら、閃光にも似た白さが瞳を射抜いて。

端から紅い、見慣れた液体がつたってくる。

…真っ昼間から、幻覚とは。

握り締めた拳に、力がこもる。

右手を首にあてがって、軽く息を吐いて落ち着ける。

服の上から、まだ治ってない傷を、撫でた。


異変の原因を、さっきやっと突き止めた。

満月だった。…つくづく、影響されやすい身体だと思う。

それがわかったところで、どうしようもないのだけれど。


血が見たいとか、内臓が見たいとか、

そういうのなら、多少は解放できるのに。

今回は…どう頑張っても、"人"がいる。

味わいたいのは、苦悶の表情と、死への絶望。

光を失う瞳、冷たくなっていく身体。死への過程、すべて。



最初は違ったはずなのに、

いつからかそれが楽しくなっていた。

無表情だった顔に、笑顔が浮かびだした。

それは、本当の笑顔じゃ、なかったけど。


…染み付いた感覚が、離れない。

「真っ赤に染まった、夢を見る。
 感触も、味もあの時みたいにリアルで、
 また繰り返したくてたまらない。
 …私は、何の為に"コレ"を抑えてるんだろう。」

2003年03月17日(月)
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