空虚。
しずく。



 空。

「何が欲しい」と問われれば、「   」と答える。
求めても求めても、満たされない。

その衝動に、少しだけ濁った物が混じる。

渇きが、とまらない。
去年も、そうだったな…

この時期の夜は、少しだけ私を狂わせる。

血に、破壊に、誘われるように…

浮かされた口調で、呟く。

「逝けよ」

闇夜が、誘っている。
空だけを映した瞳が、ぼんやりと見開かれる。
意図的に、感情を切り離した姿。

「コト」の前は、いつもそうだった。

「これ」が好きな自分を、どこかで否定していた。
知りたくなかった。

見るな。
そんな瞳で、私を見るな。

見ないで。
やめて、もう、嫌…

異なった人格が、私の中で徐々に離れた。

「私」は、なんだろう。
ゴミのように横たわる姿。
歪んだ笑みが、視界を掠める。
毎夜繰り返される、「行為」

「コト」にも「行為」にも、慣れることを、求められていた。

そして、考えることをやめた。
何も、考えられなかった。
必要なのは、抜け殻だった。

***

切れなくなった刃物を前に、考える。

「これで、よかったんだ」と。

いまだ瞳は空を映すけれど。
濡れた手は、刃を求めるけれど。
突き動かされることは、もうない。

微かに、笑みを浮かべて、呟いた。

「もう、違うんだ」

と。

2003年09月09日(火)
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