空虚。
しずく。



 願えない。

あの時語った内容は、珍しく覚えていた。
確かに酒の影響はあった。少し、飲みすぎていた。
…でも我慢出来ない程に高まるとは思っていなかった。

本当に、死体が欲しくなった。
目の前の友人を殺したくなった。
ああ、そういえば何日か前にもそんな事を言った。
"酔ってた"なんて理由にならないとわかっているのに。
血が見たかった。内臓を触りたかった。脳を舐めたかった。
そして嘔吐しながら解体するのだ。
…ああ、なんて気持ちいい。

そんな事を、嬉々としながら語っていた。
せめて語ることで、妄想することで、満足させようと。
媒体を得て、感触を想像して、思い出して…
それでも、満足は出来なかった。
理由をつけて、少しだけ足を切った。
痛みは無かった。血が、少しだけ零れた。

少し前までは、あの人の死体が欲しかったのに。
…今は、違っているらしい。誰でもいいのか、私は。

いつもの顔をしているのに、どうしてこうなのだろう。
別に装っているわけでもなんでもない。なのに、どうして。

ああ、死体が欲しい。新鮮な、死体が欲しい。
許されるならば私が殺したい。近しい人がいい。
その方が、興奮する。でも、あの人は殺せない。
だから、友人でいい。別に恐怖の顔は要らない。
死体が欲しい。死体が。

2005年05月11日(水)
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