見つめる日々

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2003年08月02日(土) 
「ほら、このパターンは明らかに変化している。原始的なたくましい勢いこそそがれているけれど、より洗練されて、穏やかな調和を保っている。ねえ、大事なのは、このパターンが変わるときだわ。どんなに複雑なパターンでも連続している間は楽なのよ。なぞればいいんだから。変わる前も、変わったあとも、続いている間は、楽。本当に苦しいのは、変わる瞬間。根っこごと掘り起こすような作業をしないといけない。かといってその根っこを捨ててしまうわけにはいかない。根無し草になってしまう。前からの流れの中で、変わらないといけないから」
「唐草の概念はただひとつ、連続することです」


「ねえ、これからきっと、僕たちも、何度も何度も、国境線が変わるようなつらい思いをするよ。何かを探り当てるはめになって、墓を暴くような思いもする。向かっていくんだ、何かに。きっと。小さな分裂や統合を繰り返して大きな大きな、穏やかな統合のような流れに。草や、木や、虫や蝶のレベルから、人と人、国と国のレベルまで、それから意識の深いところも浅いところも。連続している、唐草のように。一枚の、織物のように。光の角度によって様々に変化する。風が吹いてはためく。でも、それはきっと一枚の織物なんだ」

 呪いであると同時に祈り。憎悪と同じくらい深い慈愛。怨念と祝福。同じ深さの思い。媒染次第で変わっていく色。経糸。緯糸。リバーシブルの布。
 一枚の布。
 一つの世界。
 私たちの世界。

(梨木香歩著「からくりからくさ」より)


遠藤みちる HOMEMAIL

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