2003年10月15日(水) |
外国から絵葉書が届く。その国の名はもちろん、それが地球儀上で一体何処に位置するのか、全く思いつかない。私は絵葉書をそっと掌で抱きながら、そこに記された一文字一文字を辿り読む。 私たちはそれぞれに、或る時、同じ種類の犯罪被害者になった。それを境に、私たちの世界は反転した。それはもうものの見事に、くるりん、と。 輪郭ばかりが浮き出る色の失せた世界で、私たちは足掻き苦しんだ。その間をここまで生き延びてくるために、私たちの体はずいぶんと切り刻まれた。これからだって多分、折々に、私たちは自分の手で自分の体を傷つけてゆくのかもしれない。 でも。 これだけは言える。 私たちは自分を殺すことだけは決してしないだろう。どんなに困難であろうと、私たちは、最期まで生き延びるだろう。 そのしぶとさはきっと、私たちの力になる。味方になる。 掌の上の絵葉書一枚。吹けば飛ぶような重さかもしれない。でも、それが実は、とてつもなく重く大きく、そして尊いものか。私はそのことを知っている。 |
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