2003年10月23日(木) |
なんて美しい空。辺りは光に溢れている。木々の枝に張られた蜘蛛の巣には、昨日の雨が透明な滴となってあちこちにくっつき、光がそれを煌かせている。 それにしても、昨夕の稲妻は美しかった。真っ黒な空から世界を切り裂くように落ちてくる光筋。ああした時、空は一体何を思っているのだろう。 いや、勿論、空に心などないことは私も知っている。それでも思うのだ、君は今一体何を思っているのか、と。 怒りだろうか。私たちへの、或いは歪んでゆく世界への怒りだろうか。 それとも歓喜だろうか。普段穏やかでいることを強いられている者が今こそと絶叫し、自らの内を露わにする時の、歓喜の叫びだろうか。 どちらにしても、稲妻は、いつでも私を魅了する。誰かの激情が今目の前で露わになる、私はそれを目前で知らされる、一人の証人であるかのような、そんな清々しさを私は味わう。 雷雨の後の空がこんなにも美しく見えるのは、きっとそのせいだ。体内に溜まっていた毒が、稲妻に姿を変えて外界へ吐き出される、だから雷雨の後の空は、すかんと抜けて美しい。 今、空を見上げれば、流れてゆく雲が私に教えてくれる。世界は動いている、と。 どんなに私の心の中が滞っていて、救いようのないほどどす黒い膿で溢れかえろうと、こうして一瞬一瞬、間違いなく世界は動いているのだ、と。 だから私の内奥に蠢くモノたちにも、必ず出口が在るのだ、と。世界はただそこに在って、在りながら常に動き、変化し、そうして黙って私を見つめている。 そう、私はいつだって、世界に見守られているんだ。私がどんなにちっぽけで、どんなに穢れ惨めな存在であろうと、それでも。 世界はそんな私を、いつも見守っている。 |
|