2006年06月03日(土) |
気づいたら、四月が散り、五月も飛び去っていた。私の中には、その時間の量や重さが全く残っていない。だから私は歩きながらふと振り返る時、一体自分は何処にいるのか、いつの時代を生きているのか、分からなくなって途方にくれる。 マイナス面を突き始めたらきりがない。だからできるだけ、距離を置く。あぁあそこに穴ぼこがまたできた、あぁあそこに棘があんなにもいっぱい刺さってる、それがありありと私の目の前に光景として広がっている。本当は駆け寄って穴を埋めたいし棘を抜きたい。でも、そのエネルギーが今はない。だから、私は一歩下がる。一歩、二歩下がったところで、傍観している。私の命を奪うほどの傷じゃなければそれでいい。 時間や風を傍観している私の横で、娘は自分の世界を少しずつ作り始めている。時々彼女はそれがもどかしくなるようで、本当はまだママにくっついていたい、でも、というような気持ちに陥るようだ。そういうときは半べそをかきながら、彼女はハグを求める。だから私は思い切りぎゅうぎゅうと抱きしめる。そしてキスの雨を降らす。そうすると彼女はきゃあきゃあ笑って私の腕の中から逃げ出そうと試みる。だから私は余計にぎゅうぎゅう抱いてわざとちゅうをする。
今はまだ、活字を読むことはもちろん、文字を書くことも億劫だ。あまりにも心の中がぱんぱんに腫れあがっていて、手のつけようがない。これはじきに、膿となって噴出すのかもしれない。そのときはそのときだ。
テレビをつけニュースを眺めれば、散々な代物ばかり。でも、今は何だろう、薄いヴェールを隔てて現実を見ているようなところがある。
自分が分からないとき、私は今まで必死に探してた。でも、探しても探しても無駄な時もある。今がそのひとつなのかもしれない。だから一歩下がる。二歩、三歩、下がる。そして自分を傍観者にする。私は私であり、同時に私と言う名の他人なのだということを、つくづく思う。 もうしばらく、時間がかかる。私の空が晴れるにはまだもう少し時間が。
遠く雷鳴が轟く。風が今、駆け抜けてゆく。 |
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