見つめる日々

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2009年08月07日(金) 
   「金魚」


夏の或る日
金魚が水面に浮かぶ
水中で泳いでいたときよりも
黒い斑点がぼやけて見えるのは
気のせいなんだろうか

ビニールをかぶせた手で
掬い上げる
その瞬間
私の手に
死が

へばりついた

土に還すために
土に埋める
その作業を終えて
私は手を洗う、でも

洗っても洗っても
洗っても洗っても
洗い落とせない
死が私の手に
へばりついている

錯覚だと分かっている
それは錯覚だ、と分かっている
けれど

ここに在るんだ、死が
私の手に纏わりついて
離れないんだ、死が
どうしても、どうしても

長く生きてくれすぎて
名前さえ忘れた金魚の
亡霊が私の頭をよぎる
すやすや眠る娘の横で
私は亡霊を抱えたまま
じっと身体を丸める
死がこれ以上拡がらないように
死がこれ以上散り散りにならないように

せめて私の手の中で
じっとしているように


遠藤みちる HOMEMAIL

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