原初

羅列 回帰



―― 連ねた意味も、持てない小鳥。
氷室火 生来
回帰

2008年10月02日(木)
いたいいたい怪しい我。


スクールランブル最終巻。マガジンの購入が途絶えた後も実は地道にコミックスを集めていました。
完結記念という事でネタバレ全開にトークします。

結論というか通しての感想を先ず述べると、結局誰の恋愛も完成、いやそうじゃないな、うんと、成就? はしなかったような。
メインである天満と烏丸君の、真面目にラストの条は王道でありながらそこいらのストーリー漫画なんか目ではなく、というとまるでギャグやコメディを見下しているかのようですが多分その話長くなるのでカットカット、矢張りこの作者の見せ方がすきです。
単純に絵の上手さもさる事ながら、スクランのスクランたる所以でもある柱の台詞が絶妙な位置で本編に絡む通り、その駆け引きや心理描写などが気になって、本誌の頃から楽しんでいたんですが。

今巻の表紙を飾る女性陣は少なくとも誰も彼氏持ちにはなっていません。
愛理は名目上だけですし、八雲も、でもこの二人の場合は相手が特殊部隊ですからね。晶はひたすらミステリアスとして画かれていたので一種のマスコットキャラクターなのかとも思っていたんですが、ちゃんと肉のある人間でよかったです。いやマスコットはマスコットですきなんですけども。
個人的に一番判らないのは美琴です。そもそもなんで麻生と別れてるんだろう……この話の辺り、何故か詳しくは覚えていないんですが、ある一話だけが記憶に残るくらい反復して読み込まれていたりかと思えば見知らぬ一話があったりと妙な読み方をしていたようで、その辺も相俟ってなんか気持ち悪い。もっとこう、すっと何故読めなかった過去の己。
花井さんとこの幼馴染路線が実は密かに来るんじゃないかと勘繰っていたのでにやりとしてしまいましたが、それもまた断定はされていない訳で、というか花井フラグ多くね?
話に登場している段階でカップルである人以外は、本作中でくっついた様子は見受けられず、若しかしたら一条さんだけ別かなとか思っているんですが、最終巻で今鳥を下の名前で呼んでいたのが彼女ならば、ね。
普通物語といったら進行させていくものじゃないですか。演出として始めと終わりを同じようにしてみせたとて、逆にそれは作中で変わった何かを強調する為のものであり。
でもスクランは、充実した学校生活やドタバタコメディを繰り返し心の成長を画きながらも、人間関係に於いては、纏わる心情は格段に変わっているのに見た目の変動はほぼ無いに等しく。
いいかわるいかじゃなく、感想です。

いや、でもね、晶と同格でミステリアスである烏丸君は、主人公である天満の片思い相手であるという主要人物であるにも拘らず、若しかしたら謎のままなんじゃないかなとかちょっと思ってました。つまりギャグオチに持っていくのかなーと。
ところがどっこい熱いものを秘め決めた意を抱きしめ、やっぱ人間だったんだなと。あれ晶と言ってる事が同じだよ。いや本当、謎キャラとか賑やかしもすきなんですけどね。
そんでもって本作の、もう一人って言うよりこっちがメインだろ主人公播磨は妄想がずば抜けている事以外は80年代的なやや古臭いノリの空回りっ子でしたが、そのあまりに不憫な扱い故に、相対的に天満をちょっとすきになれなかった理由でもあります。
いや、可愛いおなごに愛されてはいるけれど、それらが眼中に入らないくらい(というか気づいてなかろう)愛した女に、誤解され勘違いされそれを他の人にまで拡大解釈で伝播されと振り回されっ放しで、ただ最終巻前のようやっと繋がった想いに関しては、よかったねと思う一方でここまで来たら伝わらない方が双方の為なんじゃないかなと思ったりもして、しかしそれを勇気やエールに変えられるのが、播磨の愛した天満。
でもトータルで見て他の人のような思い入れは天満にありません。相変わらず主人公を蔑ろにする天邪鬼具合ですねはははいいじゃないかもう。
先の播磨の思いを応援に変えての条も、それが出来るだけの柔軟性を持ち合わせているとは思う、が一方で幾ら終わりに差し掛かっているといえどまるで悟ったかのような穏やかさはなんだかな、と。
力一杯空回りし周囲も一緒に引き摺り回す、バイタリティは凄いと思うけれど、引き起こす災害の方が印象に強く好感度はどうにも。あくまで個人的な話です。
ただ、最終巻の、ありったけ熱く放った烏丸の、夢で終わった話の時点で、すれ違い確定フラグなんて下衆な事を考えていた自分は、やっぱりその通りになってしまって、天満の初めは明るく気にしていない風でありながらどんどんと信じたくない、だけど聞かずにはいられない核心に到るにつれて弱まっていく描写が、幻聴で声までか細くなっていくのを感じ取って、まさにリアルに体感。
クラス行事を語るなど声が震える辺りから、本当に遅かったのもう駄目なのと窺う色が強くなりながら、ラストの、本当に聞きたくて本当に忘れていて欲しくなくて本当に縋りたかった、二人の最後の重要なイベントの条は、馬鹿で無知で幼くて沢山の人をぶん回しながらも、強く温かく柔軟な優しさで時に誰かを励ましながらも、当然のように、普通の女の子なんだよなって。
それは、奇しくも先に言った、原点回帰に思えたり。
勿論スタート時は出出しという事でキャラクターを模索中という面はあるでしょうが、話が続くにつれ徐々に大袈裟に破綻していく(どんな話にも共通して言える事ですが)天満の天真爛漫過ぎる性格で忘れ去っていた、当たり前の女の子であると言う事実は、第一話こそが自分には教えてくれていたので。

ま、そんな永遠不滅の青春を閉じ込めたクラスがあるというのは、あくまでも二次元の向こうの話って事です。うわなんだその台無しなまとめ!


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