愛より淡く
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昨日のつづき
○○銀行の前で、待っていた夫は、心なしか心細そうだった。
でも私を見つけると少し顔が明るくなったように思えた。 まあ私の気のせいだったかもしれない。
その時どんな会話を交わしたかはもう覚えていない。
しばらく神戸三宮界隈をうろうろして、 北野通りの居酒屋に入ったと思う。
そこで、新人社員研修の頃の思い出とか 同期の仲間のその後とか話したように思う。
女の子の何人かはすでにもう辞めてしまっている子もいた。 たしか名古屋に配属された子だったと思う。
「そんなんじゃ会社も元とれないよなあ」
とか何とか話していた。
新人社員研修時代は、研修所で約2ヶ月間の缶詰状態で 会社の企業理念と営業のノウハウを徹底的にたたきこまれた。 かなりハードだった。
研修もキツかったけど現場に入って仕事をすると もっとキツい。ということも話したかな。
社会は厳しい。やっぱ学生時代はよかった。
お互いの学生時代の話などもしたように思う。
あとは 神戸の明石屋焼きがおいしい。という話をしたような記憶もある。
うだうだととりとめもない 話をするうちに時間は午前2時近くになっていたと思う。
あかん。明日仕事や。とあわてて帰ろうとした。
すると夫から
「・・・実は行き当たりばったりできたから 泊まるところないんだ。泊めてくれないかな?」
と言われた。
「それは絶対無理や」
とつっぱねた。そんなの無理に決まっていた。
嫁入り前の私がひとり暮らしの自分の部屋に 男の人を泊めるなんて考えられなかった。
もしうっかり泊めでもして、まちがいでも起こったら とりかえしのつかないことになる。と思ったのだ。
夫も「じゃあどこか探すは」とすぐに納得してくれた。
まあ当然でしょう。と思った。
で、私はタクシーに乗って自分の部屋に帰り 夫は泊まるところを探してそのまま三宮界隈を歩いた。
翌朝、夫から電話があって
「ひでーぞーーどっこも開いてなくてさ。 ひとりでラブホテルに泊まったんだ。わびしかったぞー−」
と嘆いていた。
ちょっと気の毒だったかもしれないけれど やっぱ泊めるわけには行かなかったし。 まあ、しゃあないわね。
それにいきなり来るんだもの。
それから私は出勤した。 夫は1日休みをとっていたので 神戸の観光めぐりをしてから帰るとのことだった。
で、夕方また夫から事務所に電話があった。
「今から帰る」
「そう、気をつけて」
そんな感じの実に淡々とした別れだった。
そしてもう会うこともないだろうと思っていた。
その日仕事を終えて部屋に戻ると 郵便受けのところに プレゼントが入っていた。
夫からだった。
私が仕事中に、夫が私の住んでいるところを 見つけてポストにプレゼントを入れておいてくれたのだ。
全く予期せぬことだったので、うひゃあラッキー!!って感じだった。
中を開けると、お気に入りのブランドのポシェットだった。 肩からななめがけできるようになっていて とても可愛らしいものだった。
短いメッセージが添えられていた。
何が書いてあったのかもう覚えていない。
男の人からクリスマスプレゼントをもらったのは その時が初めてだった。
じんわりと感激した。
それに、こっそり届けてくれるところがなかなか憎いかも。 けっこういいヤツかも。なんて思った。
でも近い将来いっしょになるなんてことは思いもしなかった。
そのポシェットは今でも愛用している。
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