愛より淡く
DiaryINDEX|past|will
テレビを見ていて、あるシャンプーーのCMが流れた時に、夫が急に思い出したように言った。
「そういえばお父さんには、学生時代にモデルのガールフレンドがいたんだ。ものすごーーーく可愛かったんだぞおぉぉぉぉ。」
下の子は、「うっそだーーー」と信じなかった。
上の子は、ゲームボーイに夢中で聞いていなかったので無反応。
「うそじゃないよ、テレビのコマーシャルとかにも出ていたんだぞ」
「いっしょに歩いていたら、みんな彼女の方ばっか見るんだ。すっごいすっごい可愛い子だったから、まあそうだろうなあ。なにしろお父さん、あの頃は、気が狂ったようにめんくいだったからなあ。」
としみじみと言うのだった。
なんだか、なんだか、またまた、おもしろくなかった。
そばに私という伴侶がいながら、そんな話をするなんて、なんというデリカシーのないやつ!!無神経にも程があるんじゃあーーりませんか?
私は、私は、少なくとも子供たちの前で、昔好きだった男の子の話をしたことなんて、一度もなかった。ってまああたりまえ?
子供たちが寝に行ってから、私も何か言い返してやらねばと思って、あれこれ頭の中で過去の出来事を検索していた。
すると、あ、あった。
「ねえねえ。社員研修の時にいっしょだった埼玉のAくん覚えている?」
と夫に話しかけた。
「ああ、ああ、あいつな」
「私な、あの人の友だちに、実はAくんあなたのこと思って、夜も眠れないほど悩んでいるんだよ、わかってあげてねって、打ち明けられたことあんねんで。この私にも、私にも、夜も眠れないほど思ってくれる人がいたんやで〜」
そしたら夫は、ボソっとこう言った。
ふうん、変わった奴だったんだな
それからなぜか、その時私やAくんといっしょのグループだったIさんの話になってしまった。
「いい女だったよな〜Iさん」
そうなのだ。Iさんは、ちょうどあの、「少し愛してなが〜く愛して」のCMの頃の大原麗子さんを雪国生まれにしたような美人だった。
彼女とは研修の間、何度か同室になったことがあるのだけれど、 なんだか、女の私でもムラムラきそうなほど妖艶で魅惑的な雰囲気をかもし出していた。私はひそかに彼女にあこがれていた。
シャワールームに入った時、偶然垣間見てしまった、彼女のまばゆいばかりに美しい裸体の後姿が今でもこの目に焼きついている
なんで話がそっちにいってしまったのかよくわからないのだけれど
気がついたら、私とAくんの話は影も形もなくなっていて、Iさんがいかにいい女だったかということで、盛り上がってしまったのである。
|