愛より淡く
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2003年05月17日(土) |
あの日いっしょに寝た人のこと |
私は、一度だけ、その人といっしょに寝たことがある。
といっても車、しかも社用車の中で、昼寝をしただけだ。
文字通りの昼寝だ。
木かげの涼しい所に車を止めて、カーシートを倒して ハンカチを顔にかけて、しばしおやすみ、そんな感じ。
もちろん、私は眠れなかった。となりに眠っている人のことが気になって気になって、胸の高鳴りを相手に気づかれてしまいやしないかと、気が気じゃなかった。
その時の私たちは、恋人同士でもなんでもなくて、単なる職場の同僚という間柄だった。お互い意識していたとは思うけれど、お互いの気持ちを確かめたわけではなかった。
その村のはずれに水の流れる場所があって、そこの水が格別に美味であることを、瞳を輝かせながらその人は私に話してくれた。
「今度いっしょに行きましょうよ」
で、いっしょに行った。その人の社用車に同乗して。
それからひょんなことから車内で昼寝でもして帰ろうか、ということになった。
結局いっしょに昼寝をしたのは、その時一度きりだった。
今思い出せば、なんとも妙な間柄だった。
今でも時々思い出すことがある。
例えば米を研ごうとして水道の蛇口をひねったその刹那
急に脳裏をよぎったりする
流れる水の音を耳にしながら眠ろうとしても眠れなかった
すでにあの日は、あまりに遠い。
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